Rauber Kopsch Band2. 267   

 前述の3つの海綿体と,それに属する筋を取り除くと,外尿生殖隔膜筋膜の広がり全体の表面像をみることができる(図341).中央部にある卵円形の場所(4)は尿道海綿体球がこの筋膜に付着しているところに相当する.3は尿道の位置である.前部には多くのばあい強い横走束の形をした尿道前靱帯Lig. praeurethraleがある.この靱帯と恥骨弓状靱帯のあいだには1つの隙間があって,ここを通って筋膜下陰茎背静脈が骨盤にはいって膀胱陰部静脈叢に達している(図262, 335).

 それに対して海綿体と会陰のすべての筋がだいたい自然の長さに存在する状態を 図333が示している.

 この図では外尿生殖隔膜筋膜は左右ともごく少ししかみえない.それは尿道海綿体球と球海綿体筋,陰茎海綿体と坐骨海綿体筋,および浅会陰横筋が場所を狭ばめているからである.

 球海綿体筋と坐骨海綿体筋もそれぞれ薄い筋膜で被われており,これを浅会陰筋膜Fascia perinei superficialisといい(図332),陰茎根をなす3つの部分を外方から被っていて,これらのあいだにある溝を管の形にしている.この管のなかには会陰神経と会陰動脈,およびそれちの枝が通っている.

漿膜嚢Sacci serosi, seröse Säcke

 漿膜嚢は4つあって,そのうち2つは不対のものであり,残りの2つは対をなしている.すなわち不対の心膜嚢と,左右の胸膜嚢と,不対の腹膜嚢とである.これらの嚢を作っている漿膜は心膜Pericardium, Herzbeutetと左右の胸膜Pleurae, Brustfelle,および腹膜Peritonaeum, Bauchfellである.これらの漿膜で閉じられている空所はそれぞれ心膜腔Cavum pericardii, Perikardialhbhle,胸膜腔Cava pleurae, Pteurahöhlen,腹膜腔Cavum Peritonaei, Bauchfellhöhleという.心膜と左右の胸膜はこれらによって包まれている諸器官とともに胸腔Cavum thoracis, Brusthöhleのなかにあり,腹膜は腹部の内臓とともに腹腔Cavum abdominis, Bauchhöhleにはいっている.

I. 心膜Pericardium, Herzbeutel(図99, 223, 343, 346, 347)

 心膜は第1次の漿膜ということのできるすべての漿膜がそうであるように,心膜に壁側葉Parietales Blattと臓側葉viscerales Blattとを区別する.

 この2重の嚢は心臓を完全に包んでいて,弛緩した状態では円錐形をしており,その底は横隔膜の上面と結合している.一方,先端は鈍円を呈して心膜頂Cuppla pericardiiといい,上方に向かっていて,心臓に出入する太い諸血管の起始部をそれらの最初の分岐のところまで包んでいる(図99).ひろがった状態では心膜が卵形をしている.

 壁側葉はその上に線維性の層,すなわち線維膜Tunica fibrosaが重なっていて補強している.両者(壁側葉と線維膜)はいっしょになって外心膜Pericardium externumをなすのである.すなわち外心膜は内方の漿膜層と外方の線維層とからなっている.この膜は心臓に密接している.

 線維性の層は丈夫で厚い固い結合組織性の膜であって,線維性結合組織の束と弾性線維からできている.これらの束の特別な配置によって心膜は拡張性と弾性をもっている(Wallraff, J.,1937).

 横隔部Pars diaphragmaticaにおいて線維層は横隔膜の腱中心と結合している.しかし固い結合は腱中心の前縁に沿ってこれにつづく横隔膜の筋肉部にわたっている狭い横走の1つの帯状部だけにみられる.心膜頂では線維層が管の形をなして長くのび,太い血管の外膜に続いている.

 心膜の前壁は胸肋部Pars sternocostalisといい,胸骨の後面と何本かの(たいていは2本の)線維性の索,すなわち(上,下)胸骨心膜索Chordae sternopericardiacae (cranialis et caudalis)によってつながっている.上方では椎前筋膜の束が心膜と大血管とに放散してきている.これを上心膜索Chordae pericardiacae craniales という.

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最終更新日13/02/03

 

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