Rauber Kopsch Band2. 269   

II. 胸膜腔Cava pleurae(図343347)

(, 右の)胸膜腔Cava pleurae(dextrum et sinistrum)は閉じられた2つの漿膜性の嚢で,胸腔の左右各半を内側から被っている.そしてそのなかには肺が内側面の方から入りこんで拡がっている.その漿膜の被いを胸膜Pleura, Brustfellという.

[図343]胸膜腔 前方から開いたところ(1/5)

 胸膜の壁側葉は黄色,心膜は緑色,横隔膜は赤色に塗り,頚部は剖出してある.前胸壁とそれに相当する胸膜の部分は取り除いてある.

 1 第1肋骨;2 胸骨柄;3 鎖骨の肩峰端,その内側部は両側とも取り除いてある;4 剣状突起;5 白線;7腹横筋;7 第7肋骨;8 胸鎖乳突筋;9 前斜角筋;10喉頭;11 甲状腺;12 中頚筋膜;13 前縦隔の上部;14 胸膜頂;15 胸膜の縦隔部;16 胸膜の肋椎部の下界;17 心膜(緑);18 肺の上葉;19 肺の中葉;20 肺の下葉;21 横隔膜.

 左右の胸膜は臓側部と壁側部とからなりたっている.

 臓側部は肺胸膜Pleura pulmonalisといい,肺門と縦隔肺ヒダPlica mediastinopulmonalisの付着部を除いた肺の全体を被っている.そのさい胸膜は肺葉を区切っている葉間裂に沿って入りこみ,肺門の近くの葉間裂の底に達して,そこで1つの肺葉の表面から他の肺葉の表面に移っている.

 壁側部は壁側胸膜Pleura parietqlisといい,肋椎部Pars costovertebralisとして肋骨と肋間筋,および椎体の内面を被っている.なおまた横隔部pars diaphragmaticaは突出した横隔膜の上面を被い,そしてさらに矢状方向にある第3の部分,すなわち縦隔部Pars mediastinalis(図343,15)が正中面の側方において後胸壁から前胸壁に,つまり椎体の前面から胸骨に達している.縦隔部のうちで心膜の外面を被っているかなり大きな部分は特に心膜部Pars pericardiacaとよばれる.各側の胸膜嚢の上部は胸膜頂Cupula, Pleurakuppel(図343,14)といい,その側の肺尖を入れていて,円錐形にふくらんだ嚢の形をなして胸腔の上口において頚部に突入しているようになっており,第1肋骨の前方部を上方に3~4cmも越えて,斜角筋群の下で,第7頚椎の中央の高さまで達している.斜角筋群はこの胸膜頂を上方から被っているのである.

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最終更新日13/02/03

 

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