Rauber Kopsch Band2. 274   

 肺胸膜の神経はKöllikerによって研究された.その分枝部には神経細胞がある.壁側胸膜の神経はいろいろな源からきている(Braeucker,1927).すなわち胸膜の肋椎部は主として肋間神経によって支配される.この神経ば縦隔部の前部にも達している.肋椎部の後部と縦隔部の後部は交感神経幹およびその縦隔枝から小枝を受けている.そのほかに縦隔部の後部には大動脈神経叢と迷走神経からの枝も来ている.一方,縦隔部の前部は横隔神経と心臓神経およびこれに近接している太い血管の周りの神経叢からの枝を受けている.

 胸膜頂には交感神経の下頚神経節,下心臓神経,第8頚神経と第1胸神経の幹および交通枝,鎖骨下動脈神経叢,横隔神経からの小枝が来ている.

縦隔Mediastinum, Mittelfell

 左右の胸膜嚢と肺は矢状面上にある隔壁,すなわぢ縦隔Mediastinumによって境されている.縦隔は胸骨から胸椎体まで達しており,いろいろな器官と脂肪組織によって完全にみたされている.この隔壁の左右の表面は胸膜の縦隔部からできている,縦隔を前部と後部とに分ける.この2つの境は左右の肺根と肺門の前部を通る前額面である.

 縦隔の前部(前縦隔)Pars ventralis mediastiniは心臓と心膜嚢,太い血管の初まりの部分(上大静脈,大動脈,肺動脈とその左右両枝),なお横隔神経の胸部,リンパ節,脂肪組織,胸腺をもっている(図223).

 縦隔の後部(後縦隔)Pars dorsalis mediastiniはもっと多くのものをもっている.すなわち気管,食道,左右の迷走神経,胸大動脈,胸大動脈神経叢,右肋間動脈の初まりの部分,大および小内臓神経,左と右の縦胸静脈,胸管,リンパ節,脂肪組織である(図224, 226).

 交感神経幹と大および小内臓神経の根はすでに後縦隔のそとにある.

III.腹膜Peritonaeum, Bauchfell

A. 概観

 腹膜は腹腔と骨盤腔を被っている漿膜であって,われわれの体のなかでだんぜん他のものをしのいで広がっている袋,すなわち腹膜腔Cavum peritonaei, Peritonaealhöhleを作っている.

 腹膜は他の漿膜嚢と同様にその表面から少量の薄い水様の液を分泌しでいる.これを腹膜液Liquor peritonaeiという.この液は腹膜の上皮が滑らかであることと相まって,腹腔と骨盤の諸器官の大部分が生体において数多くの,その一部はかなり目立った形と位置の変化をすることを可能ならしめている.

 腹膜とそれが被っている諸器官との固着するぐあいはさまざまである.いくつかの場所ではその下の層と固くくっついて動かない.他の多くの場所では疎な腹膜下組織によってきわめて可動性に下の層とつながっている.

 内臓は腹膜腔にずっと入りこんでいるので腹膜にはいろいろなひだを生じている.かなり大きい腹膜のひだが腸管の諸部を腹壁に固着させていて,腸管に分布する脈管がその中に包まれており,これを腸間膜Mesenteria, Gekröseという.1つの内臓から他のものに移っている腹膜の大きいひだであって,それが後に述べる大と小の腹膜嚢に属する膜によって作られているものをOmenta(Epiploa),Netzeと呼んでいる.

 男では腹膜嚢はどの側をみても閉じている.それに反してでは卵管の腹腔口abdominale Tubenmündungという開口が左右各側にあって,ここが卵管,子宮,腔を介して外界と開放性につながるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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