Rauber Kopsch Band2. 283   

このひだは回腸の後面から出て,回腸の終りの部と盲腸および虫垂のあいだの隙間をうずめている.反対側,すなわち前がわでは回腸の盲腸への開口は上回盲腸ヒダPlica ileocaecalis cranialisという小さいひだによって被われており,これは回結腸動脈の1枝を包んでいる.このひだは小腸間膜の右側面と回腸の前面から高まって出て,盲腸に向かってすすみ,ここに終わっている.これは腸壁とともに上回盲腸陥凹Recessus ileocaecalis cranialisという小さいくぼみを境している(図162).

 回腸の下縁において,小腸間膜の下端からきやしやなひだが出ていて,虫垂に向かってすすみ,これを包んでいる.このひだは虫垂にゆく脈管も含んでいて,虫垂間膜Mesenteridlum processus vermiformisという.

 上行結腸は前方と側方を腹膜で被われている.後面のせまい帯状のところがたいてい腹膜をもっていない(図164).しかしときには上行結腸間膜Mesocolon ascendensのあることがある.これは幅の広いことも,せまいこともある.

 左結腸曲のところには横隔結腸ヒダPlica phrenicocolicaという腹膜のひだが強く突出している.これは側腹壁から横走して左結腸曲に張っているのである.このひだの上には深いところに脾臓の前端がのっているが,これは決して固着しているわけではない(図99, 164).

 下行結腸と腹膜の関係は上行結腸のばあいと似ている.後方の帯状の部分(多くの場合せまい)は腹膜がない(図164).しかし前面と側面は腹膜で被われている.外側面にはときにいくつかの小さなくぼみ,すなわち結腸傍陥凹Recessus paracoliciがある.ここにもまた幅の広さがさまざまな下行結腸間膜Mesocolon descendensのみられることが時としてある.

 それに反してS状結腸は大きい広がりをもつことのある腹膜のひだに包まれている.このひだをS状結腸間膜Mesosigmoideumという.これが後腹壁に付着する線は,いろいろ異なる高さで始まっている.

 S状結腸を上方に折りかえして,結腸間膜を緊張させると,その左面のところにロート状のS状結腸間陥凹Recessus intersigmoideusがあらわれる(図354, 3).これはときにぼはなはだ深いことがあり,しかし変化に富んでいる.陥凹の左側で腹膜のうしろには精巣動静脈があり,また右側には上直腸動静脈の枝がある.

 S状結腸間膜の下端は直腸間膜Mesorectumに続いている.これは直腸の上部をしっかり支えている丈の低い腹膜のひだである(図350).腹膜はそれより下方で直腸から離れて(男では)膀胱に,あるいは腟円蓋と子宮に移行している.このようにして直腸膀胱窩と直腸子宮窩がつくられる.

 女の場合にはこの折りかえしの部分で直腸の側面から半月形のひだが子宮に向かっている.これは平滑筋を含んでいて,直腸子宮ヒダPlica rectouterinaという.両側にあるこのひだが直腹子宮窩Excavatio rectouterina(ダグラス腔Cavum Douglasi)の上界をしている(図275, 285).

4. 小腸の腹膜嚢Dünndarmkmpsel

 腸間膜小腸を入れている第4の腹膜嚢を観察するまえに,十二指腸と腹膜との関係をもう一度調べておこう.

 十二指腸の上部はほぼ完全に腹膜に被われており,下行部と下部は前面だけしか腹膜で被われていない(図99, 164).一方,その後面は結合組織によって後腹壁に付着している.

 十二指腸の上部は前方が大きな腹膜嚢の一部により,後方は網嚢の前葉によって被われており,内側のせまい帯状のところは腹膜で被われていない.下行部は横行結腸間膜の初まりの部が横め方向に越えている(図99, 164).それゆえ下行部の上部は結腸間膜の上葉が上方にのびた部分によって被われており,それに対して,下部と上行部は結腹間膜の下葉が下方へのびた部分によって被われている(図160).小腸間膜について観察すると,十二指腸の下部の右半分は小腸間膜の右葉の上方への続きによって被われており,一方その左半分は小腸間膜の左葉の続きによって被われている(図159, 164).

 小腸の腹膜嚢は十二指腸空腸曲のところから始まっており,空回腸を入れている.すなわち小腸間膜Mesosteniumである.つまり小腸間膜は空腸と回腸を体腔の後壁に固着させている大きな腹膜のひだである.このひだの両葉,すなわち右葉と左葉はその末棺端において互いのあいだに空回腸を入れており,血管・リンパ管・リンパ節・神経・結合組織・脂肪組織をも包んでいる.小腸間膜の付着線,すなわち小腸間膜根Radix mesosteniiは第2腰椎体から斜め下方へ右腸骨窩に伸びており,ここで小腸は大腸に移行している(図99, 164).

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最終更新日13/02/03

 

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