Rauber Kopsch Band2. 285   

この自由縁の下(外側)端が骨盤壁に固着するところには卵巣動静脈をふくむ丈のひくいひだ,すなわち卵巣提靱帯Plica suspensoria ovariiが終わっている.子宮広ヒダには下部の子宮間膜Mesometriumと上部の卵管間膜Mesosalpinxとを区別する.そのほかに短い卵巣間膜Mesovariumがある.

 子宮広ヒダの側方への付着部と,その2枚の膜(前葉と後葉)が分れるところは内腸骨動脈に沿っている.すなわちこれは仙腸関節の部分にある.しかし鋭い自由縁の下(外側)端は大骨盤のなかで総腸骨動脈に接しており,この動脈が内外の腸骨動脈に分枝する場所の上方にある.

 子宮の前壁と膀胱の後壁のあいだには子宮膀胱窩Excavatio vesicouterinaがある.これは普通はせまい隙間状であって,腸管係蹄を入れていない.一方は子宮と腟円蓋,他方は直腸とのあいだにある矢状方向の強く突出した大きなひだが左右にある.これは平滑筋を含んでおり,直腸子宮ヒダPlicae rectouterinaeという(図275, 285).

 この2つのひだと直腸および子宮のあいだにあるくぼみを直腸子宮窩Excavatio rectouterina(ダグラス腔Douglasscher Raum)という.これは普通は後腔円蓋の高さまでしか達していないが,しかし(いずれにせよまれなことであるが)もっと下方に達していることもある(図275, 276, 285).

 前・後・上方で子宮と結合している腹膜の被いが子宮周膜Perimetriumと呼ばれることはすでに述べた(215頁).側方では子宮と漿膜との結合ははるかに疎である.ここには結合組織が集り,子宮に分布する脈管,神経の幹がある.この外側部の結合組織は子宮頚の前面にも達しており,また静脈叢をもっていて,子宮傍[結合]組織Parametriumとよばれる.これは前方と後方を子宮広ヒダの両葉で被われている.

 男では直腸膀胱窩Excavatio rectovesicalisだけしかない.その下方の境は図266, 270に示されてある.膀胱の後面には左右の精管膨大部のあいだに腹膜のない部分がある.男でもまれに直腸膀胱窩がいっそう下方まで達していることがある.

C. 腹膜の微細構造

 腹膜の微細構造は本質的には他の漿膜とちがわない.臓側葉は平均45~67µ,壁側葉は90~130µの厚さをもっており,結合組織性の基礎からなっている.その線維束はいろいろな走向をとって相交わり,また弾性線維の豊富な網をもっている.弾性線維の網は壁側葉でいっそうよく発達している.薄い基礎膜の上を1層の扁平上皮が被って(第I巻図53),これが漿膜Tunica serosaに滑かさと光沢をあたえている.横隔膜のところではこの上皮に特別な隙間状の小口があって,これが奨膜嚢の腔所を深層のリンパ管につないでいる.その他のところでは腹膜上皮は密着していて隙間がない.

 漿膜下組織Tela subserosaは疎であったり,あるいは比較的かたい組織であったりするが,腹膜と諸器官とのあいだをつないだり,あるいは腹膜の各葉のあいだをたがいに結合している,若干の部分(結腸,大網,網膜垂)を除いては臓側葉の下には漿膜下組織がわずかしかないか,あるいは全くみられない.この例外的な若干の部分では脂肪層が著しく発達していることがある.

 平滑筋は重要な構成要素であって,多くの腹膜のひだのなかに存在しており,とりわけ子宮広ヒダではよく発達している.それゆえに子宮の表面の筋層は全くこの子宮広ヒダの筋束のつづきであるとまで考えた人がある.

 血管は全体として乏しい.また漿膜に属しているリンパ管も存在する.神経はあまり豊富でない.その源は交感神経,腰神経叢および仙骨神経叢の交通枝,横隔神経にたどることができた.Ramströmによると前腹壁は第7~12肋間神経と第1腰神経および腸骨下腹神経と腸骨鼡径神経からの諸枝を受けている.これらは血管神経として終るものと,漿膜下にある細い無髄神経網に終わっているもの,および棍状小体と層板小体をもって終るものとがある.横隔神経は前腹壁の腹膜の神経支配とは少しも関係がない.

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最終更新日13/02/03

 

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