Rauber Kopsch Band2. 290   

その構成には神経突起(軸索突起)および樹状突起の最も細い末端部ならびにグリア網胞のそれが関与している(図356).それゆえ脳皮質は神経合胞体Neurencytium(Held)である.同様な所見が人の大脳皮質についてもK. Bauer(1940)によって得られている. Bauer(1943)はこの構造を綜合器官Integrationsorganと名づけ,かつ人の大脳皮質では動物の脳におけるよりもこれがはるかによく発達していることを指摘している.

 Bauer, K, F., Organisation des Nervengewebes und Neurencytiumtheorie. München 1952.

[図357]細胞周囲の神経終末網 若いイヌの神経細胞(Veratti,1900).

[図358]ニューロンの細胞体および樹状突起に側枝がきて終る様子 後索の線維であって,その側枝が後柱膠様質の細胞に達しているのである(Betheの原著, Cajalより引用).

 これらの事実はニューロン説に賛否両方の多数り議論を生むこととなった(Nissl 1903, Bethe 1904, Schiefferdecker 1904, Strasser 1907, Held, H., Fortschr. naturw. Forsch. Berlin 1929).ここではその詳細を述べることができないので,この問題に興味をもつ人には上に述べた諸学者の書いたものを読むことをすすめる.--W. Kirscheは(Psychiatr. Neur., med. Psych., 6. Jhrg. において)ニューロン説を固持している.シナプシスは時により変りうる生きた構造であるという.--Harrison(Arch. exper. Zellforsch., 6. Bd.,1928)によれば培養した神経組織での観察はニューロン説に味方するものであるという.--Bauer, K., F., A. Psych. u. Z. Neur.1951.

 学生を教えるに当たって,神経系の概観を得させるためには,個々の神経網胞とこれらから出るすべての突起を合せたものに対してわれわれは総括的な名前をもつのが都合がよいのであって,それにはニューロンという名前がやはりいつでも適当である.たとえすべてのニューロンが中枢神経系の汎在基礎網の中で,あるいはまたその他の場所でたがいに続いているとしてもである.

 それゆえこれより以下ではニューロンという語は「1つの神経細胞とそのすべての突起およびその終末までもふくめたもの」という意味をもつことにする.

d)細胞周囲の神経終末網Perizellulares nervöses Endnetz(Held)

 いろいろなニューロンの間の結合は汎在基礎網のなかだけで起るのでなく,1つあるいはそれ以上のニューロンの細大種々の枝が別のニューロンの細胞体や樹状突起に接していることが広くみられるのである.細かい線維からなる網目構造,すなわち線維籠Faserkorbが細胞体およびその突起の周囲にあって,この網には外からかなり太い枝(他のニューロンに属する側枝や樹状突起)が入ってきている(図358).

 この網目の比較的あらいものからいっそう細い線維が出て,これが神経細胞の細胞体および樹状突起の表面に目の細かい網であるゴルジ外網äußeres Golginetz(図357)を作っている.この網はごく少量の原線維周囲物質に包まれた神経原線維より成り,細胞体および樹状突起に外からぴったりと接している(Bethe). Heldによれば(図359)神経細胞にやってくる多数のごく細い神経枝の終末が肥厚して神経終末足Nervenendfüßeをなし,これが突起を出してたがいにつながっている.

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最終更新日13/02/03

 

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