Rauber Kopsch Band2. 291   

こうして細胞周囲の神経終末網Perizellulares nervöses Endnetz(図359)が生ずる.この網の結び目のところが神経終末足であって,ここには格子状の神経原線維網があり,原線維を神経細胞の内部に送りこんでいる.その包まれている神経細胞から原線維が細胞周囲の神経終末網の中に出ていることも当然考えられるのである.この網は外方へはいわゆる汎在基礎網“allgemeines Grundnetz”と続いている.従って細胞周囲の神経終末網はたんに基礎網の一部であるに過ぎない.

 それゆえHeld(1927)は灰白質の中で神経原線維の格子を次の3つに区別しているのである:すなわち1. 神経細胞の内部にあるもの,2. 細胞周囲の神経終末網,3. 汎在基礎網.

 したがって興奮が他のニューロンに伝わるには基礎網の中で樹状突起の分枝および神経突起(軸索突起)の分枝(図361)を介することもあり,あるいは神経終末足によって直接に細胞体およびその樹状突起の幹のところに伝わることもある(図358, 359, 362).これらのシナプシスは変りやすい構造であって,進行性および退行性の変化を示すのである(W. Kirsche, Psychiatr., Neurol., med. Psycholog., 6. Jahrg. ).

 Bethe, A., Allgemeine Anatomie und Physiologie des Nervensystems. Leipzig, G. Thieme 1903.--Held, H., Monatsschr. Psych. NeuroL, 65. Bd.,1927,およびFottschr. naturw. Forsch., Heft 8,1929.--Boeke, I., Kon. Akad. Wetenschappen,1929. Bauer, Kar1, Z. Zellforsch., 30. Bd.,1940およびArch. Psychiatrie,114. Bd.,1941.

[図359]細胞周囲の神経終末網 イヌの脊髄前柱の細胞(Heldによる,1929).

4.一次,二次,さらに高次のニューロンNeuronen I., II. usw. Ordnung

 各ニューロンは興奮を1つまたはそれ以上の場所から,1つまたはそれ以上の別の場所に伝えるのである.インパルス(刺激)Impulsはそこで直接に(神経原線維が1つのニューロンから他のニューロンに,中絶せずに移行しているとの仮定のもとに),あるいは間接に(興奮がたんに接触しているニューロンの間で伝わるという仮定のもとに)第2のニューロンに伝達してゆく.同じようにして第2のニューロンからインパルスが第3のニューロン,第4のニューロン等々に伝達される.いま問題としているこれらのニューロンは一次ニューロン,二次ニューロン,三次ニューロン等と名づけられている(図360363).

 ここで特に次のことを強調しておく,すなわち1個の低次のニューロンから興奮が多数のより高次のニューロンに伝わるが,また多数の相異なる場所からの興奮が単一のニューロンに伝達される.そのさい同一の興奮が中枢器官のいろいろ違った場所に達した後に,これらの場所からふたたび1個の神経細胞に達することがある.

 Elze(Z. Anat. Entw.,94. Bd.,1931)は伝導弓Leitungsbögenと綜合場所Integrationsorteとを区別している.伝導路Leitungszvegeはみな末梢に始まり,中枢神経系を通ってふたたび末梢に帰る.伝導弓の頂点は中枢神経系の内部にあって,その求心性の脚と遠心性の脚とはその小部分だけが中枢神経系のなかにある,なぜならばそれより大きな部分は末梢神経系に属しているからである.直接反射弓direkter Reflexbogenのなかにあるような最も簡単な伝導弓はただ2つの脚,すなわち求心性のニューロンと遠心性のニューロンとだけからできている.第3のニューロン(脊髄の索細胞Strangzellen,脳の網様核Nucleus reticularis)をあいだに介して興奮が同側および反対側のかなり多数のニューロンに伝達される.これらの2節および3節からなる伝導弓を全部合せたものが脊髄および脳幹の固有装置Eigenapparatをなしている.

 

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最終更新日13/02/03

 

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