Rauber Kopsch Band2. 293   

 このような伝達弓は脳のあらゆる部分に存在する.かくして脳内の一定の場所(小脳皮質,中脳の視蓋,大脳皮質)は次のような特徴をもっている.すなわちこれらの場所は末梢の全体から求心性の脚が集まってくるが,しかしここからは(求心性の脚よりも)ずっと少い数のごくわずかな遠心性の伝導路だけが末梢にもどってゆくのである.それゆえこれらの場所では伝導路の集中が起るので,Elzeは綜合場所Integrationsorteと名づけている.この3つの綜合場所にわたっている伝導弓の全体が綜合装置Integrationsapparatを成すのである.

5.核と中枢Kerne und Zentren,伝導路と神経束Bahnen und Bündel,神経根と根線維Wurzelln und Wurzelfasern

 同じ作用をいとなむニューロンの細胞体Zellkörperは概していっしょに相ならんで集まって群をなしている.その群は周囲に対してある程度境のついた区域をなしている.このような細胞体の群Zellkörper-Grappeはそれらの細胞の樹状突起および他のニューロンの終末分枝Telodendrenの混和した部分といっしょになっていて,中枢ZentrenあるいはNuclei, Kerneと呼ばれるのである.(脳神経のみに関しては)その細胞群が神経突起を末梢に送っているときは起始核Nuclei originisといい,求心性の伝導路がその細胞群に終わっているときは終止核Nuclei terminalesとよんで,両者を区別している.

 それゆえ舌下神経核とは,その神経突起が集まって舌下神経を作るところのニューロンの細胞体群の全部をさし,言語中枢とはそこの細胞が言語を発することに特にはたらいている大脳皮質の一部をいうのである.

 同じ機能をもつニューロンの細胞体と樹状突起だけがたがいに近くにあるのでなく,そういうニューロンの神経突起(軸索突起)Neuritenもやはり束をなして集り長短いろいろの差があるがたがいに並んで走っている.

 神経突起のあつまつた比較的太い束はTracths, BahnenあるいはFasciculi, Bündelと名づけられ,その細いものは線維束Faserzügeあるいは線維Fibrae, Fasern,Filaと呼ばれる.それぞれの伝導路を特徴づけるものは形態学的および機能的な性状である.そのはたらきによって知覚性sensibel(感覚性sensorisch)および運動性motorischの伝導路,ならびに連合路Assoziationsbahnen(Vetbindungsbahnen)を区別する.

 中枢神経系に出入する神経突起束あるいは神経線維束はRadices, Wurzelnと呼ばれる.また個々の神経突起を根線維Filum radiculare, Warxelfaserという.

6.ニューロンの分類Einteilung der Neuronen

 神経突起が刺激を伝える方向により,またニューロンの位置によって,3つの大きな群が区別される,すなわち求心性遠心性,および介在性のニューロンである.

1. 求心性ニューロンzentripetale Neuronenすなわち受容ニューロンrezeptorische Neuronenは末梢で受けとった刺激を中枢に伝え,ここでその刺激をさらに他のニューロンにあたえる.これらのニューロンは感覚器の神経(感覚神経sensorielle Nerven)であって,末梢では神経上皮細胞(嗅細胞,視細胞)の突起として始まるか,あるいは(単に知覚性のものとして)末梢の神経網あるいは特別な終末器(Gefühlsnervenのばあい)(Guttmann:Medizinische TerminologieによればGefühlsnervenはsensible Nerven(知覚神経)と同意語である.(小川鼎三))のなかで始まり,そのニューロンの細胞体は他の場所(脊髄神経節のなか)にある.

2. 遠心性ニューロンzentrifugale Neuronenすなわち奏効ニューロンeffektorische Neuronenはその神経突起によってインプルスが中枢から末梢の器官へと伝わる.これらのニューロンは横紋筋および平滑筋に達する,すなわち運動神経motorische Nervenである.平滑筋の神経に属してその重要な一部をなすものが脈管の筋肉に分布する神経,すなわち脈管神経Gefäßnervenであって,そのなかで脈管収縮神経線維vasokonstriktorische Fasern(血管運動神経vasomotorische Nerven)はその興奮が血管を収縮させるものであって,もう1つの脈管拡張神経線維vasoditatierende Fasernはその刺激によって脈管の能動的な拡張がひき起されるものである.刺激によって収縮が起きないで,運動を緩慢にさせたり(Verlangsamung)また停止(Stillstand)させるような運動神経は抑制神経Hemmungsnerwenとよばれる.生理学ではなおその他のはたらきをもつ脈管神経のあることが知られている.Drüsenに達して,そのはたらきに影響をあたえる遠心性神経は分泌神経sekretorische Nervenという.さらに特別な一種類の神経としてしばしば問題にされているのが栄養神経trophische Nervenと呼ばれるもので,これは組織の栄養Ernährungということに一定の影響をおよばすものとされているが,しかしその実在については疑問があり,おそらくこれは血管運動神経あるいは分泌神経に他ならぬものであろう.

3. 介在性ニューロンinterzentrale Neuronenは中枢器官のうちの異なる部分の間を結合するニューロンである.これらは決して一次ニューロンではなくて,いつもそれより高次のニューロンである.その神経突起の長さはすこぶるいろいろである.なぜならばこの神経突起は中枢器官のなかで隣り合せている部分を結びつけたり,あるいはたがいに遠く離れている部分を結合したりするのである.つまりこのニューロンのはたらきは連合ということにあるので,連合ニューロンAssoziations-Neuronenと呼ぼれる.

 また中枢神経系以外でも末梢神経節のなかや末梢神経のなかには介在性ニューロンが存在する.

S.293   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る