Rauber Kopsch Band2. 305   

 柔膜のもつ細い血管は両板のあいだを走り,次いでその内板から外膜性の鞘をあたえられて垂直に髄質のながにはいりこんでいる.この外膜性の鞘の初まりはロート状に広がって,いわゆる柔膜漏斗Piatrichterをなし,柔膜の両板のあいだの隙間に開口している.この隙間は柔膜のもつリンパ腔Lytmphräumeである.

 脊髄柔膜の神経は大部分が交感神経に由来するが,後根からくる脊髄神経性のものもある.これらの神経は柔膜の外層のなかで柔膜神経叢Plexus nervosus piae matrisを作る.その終末器官Endorganeは次のようである:すなわち単純な終末einfache Endigungenとしては神経原線維が円板のような形に広がったものであり,他は終末糸球Endknäuelをなすもので,後者はクラウゼ終末棍状体にはなはだよく似ているが,それぞれのものが形を異にしていて,典型的でない終末器官にいたるまで全くいろいろである(Stöhr jr., Z. Zellforsch., 30. Bd.,1939).この神経叢の成分は柔膜の細い動脈に接していて,その一部は脊髄の内部に入りこむ動脈の小枝とともに脊髄内の比較的太い中隔のなかに達している.

4.脊髄の脈管

 脊髄の動脈には次のものがある:すなわち

1. 前脊髄動脈Aa. spinales ventrales,これは椎骨動脈の枝である.

 この小血管は両側のものが下方に向かってたがいに近づき,脊髄の上端で合して対をなさない前脊髄動脈A. spinalis ventralisとなる.この不対の動脈は脊髄の前面の中央を前正中裂の入口の前に沿って始終ほとんど同じ太さですすみ,終糸にまで達してそこの両側で後脊髄動脈と弓なりに曲がって吻合している.

2. 後脊髄動脈Aa. spinales dorsales,これもやはり椎骨動脈の枝である.

 これは前脊髄動脈よりいくらか下方から起こっていて,この動脈と違って他側のものと合することがなく,脊髄とその後根とのあいだにかくれている.

3. 脊髄枝の中小枝Rdmuli medii der Rami spinales,脊髄枝というのは椎骨動脈,肋間動脈,腰動脈,腸腰動脈,外側仙骨動脈の脊髄枝である(第I巻,562, 593, 604, 612, 614頁).

 前脊髄動脈はその走行の途中で絶えず矢状方向に前正中裂のおくに細い枝を送っているが,この枝はそこで各側1列をなして前交連を通って脊髄の両側半に入りこむのである.同じように後脊髄動脈から,ならびに柔膜の血管網の全領域からも小枝が放射状に脊髄のなかに入っている.これらの小枝は主として脊髄内の中隔系のなかを通っている.中隔系の結合組織に伴われて,細い動脈が数多く灰白質に達する.すでに白質の内部で小枝をだし,これらの小枝が神経線維束を包んでいる長くのびた網の目の毛細管網を作っている.灰白質の毛細管網はそれよりはるかに密であり,灰白質の中では狭い多角形の網の目をなしている.

 脊髄内部の動脈枝はすべて終動脈Endarterienである.

静脈Venen

 毛細管網から出てくる静脈血は,特に2本のかなり太い内部の静脈である内脊髄静脈Vv. spinales internaeに集まるのである.外側の静脈は前外脊髄静脈Vv. spinales externae ventralesと後外脊髄静脈Vv. spinales externae dorsalesとである.

 左右の内部静脈Zentralvenenはそれら2本の間および外部の静脈といく重にもつながっている.--脊髄から流れ出る静脈血の他の一部は放射状に白質をへて外側の静脈に達していて,これらの外部静脈が分節性の通路によって脊柱管の内部の静脈叢と続いている(第I巻,658頁参照).

リンパ管Lormphgefäße

 硬膜外extradural,硬膜下subdural,クモ膜下subarachnoidalおよび柔膜内interpialのリンパ腔はすでに述べた.

 脊髄の内部ではリンパ路が血管周囲腔の形で動脈および静脈に伴なっており,この血管周囲腔は血管の外膜と血管周囲境界膜Membrana limitans perivascularis(図396)との間にある(Robin, Virchow).

 クモ膜下腔および硬膜下腔は脊髄神経のリンパ隙と続いている.このリンパ隙は導出するリンパ管Lymphgefäßeとつながり,このリンパ管が近くのリンパ節に注いでいるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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