Rauber Kopsch Band2. 310   

出て行く神経根Nervenwurzelnに関しては,次のことが明かである,脚すなわち脊髄のある部分で根線維がたくさん出ていればいるほど,横断面での灰白質の広がりはいっそう大きいのである.そして灰白質は体肢への大きな神経がおこっている高さで最も強大なのである.

 ところが白質はこれと全く違った関係にある.脊髄円錐の尖端の部分では,その横断面は主として灰白質よりできていて,この灰白質は狭い白質の1層によって包まれているにすぎない.ここから白質は頚膨大の上部にまで絶えず増加する(24.02qmm以上にまで)のであるが,ただ第3腰神経から第12胸神経までの間ではごくわずかに減少することによって増加が足ぶみしている.その増加は頚,腰の両膨大の初まりのところでは他の場所におけるよりもずっと急激こおこっている.

 第4腰神経が出るところでは,灰白質と白質とはほとんど同じ大ききの面積を占めている(灰白質は21.02qmm, 白質は22.34 qmm).それより上方では,常に白質は横断面において灰白質よりも大きい広がりを示している.頚膨大でもこの関係は変らない.第6頚神経が初まるところでは,白質の横断面の面積は24.02qmm,灰白質のそれは16.67qmmである.次いで第4頚神経から延髄までは,白質がふたたびわずかに減少することがわかる.しかしながら個々の白質の索はこのばあい違った関係を示すのである.

 灰白質がそこから出る神経根に比例して増加あるいは減少することは上に述べた.しかしこのことはまず第1に前柱に関連しているのである.後柱は膨大部のために影響されることが比較的に少い.もっとも後柱の膨らみがそこで増すことは確かである.このことは特に腰膨大であてはまるのであって,ここでは後柱がかなり大きな幅をもっている.頚膨大における前柱の増加は,まず側方に増大するので孤立した側柱はもはや見られなくなる.脊髄円錐の尖端に向かっては前柱と後柱との境がなくなる.同時に両側の後柱はますます近より,結局合して一塊となる.

 頚,腰の両膨大では,白前交連Commissura ventralis albaが特によく発達しているが,その他の場所では灰白交連Commissura griseaが優っている.

 灰白交連は脊髄円錐で最もよく発達し(その矢状径が(0.40mmに達する),腰膨大では減少し(0.13 mm),胸部ではさらにいっそう減じて(0.03Inm),頚髄ではふたたび増大している(0.13mm).

8.脊髄の微細構造

a)支持構造 stützendes Gerüst
A. 概説im Allgemeinen

 脊髄および脳の支持構造はその起源が根本的にたがいに違っている2つの組織よりなる:すなわち

α. 柔膜性結合組織の突起piale Bindegezvebsfortsätzeから起る組織,これは脊髄の中に入りこむ極めて多数の血管に伴っている;

β. 神経膠,すなわちグリアNervenkitt, Neurogtia, (Nomina Anatomica JaponicaによればGlia, Neurogliaは神経膠あるいは[神経]膠, Gliazellenは[神経]膠細胞と定めてあるが,本書では簡単のためグリア,グリア細胞と呼ぶことにする.(小川鼎三))これはグリア細胞Gliazellenとグリア線維Gliafasernからなる.

 グリア細胞は多少の差はあれ豊富な枝分れをもつものであって,それらの突起がたがいにつながっている.灰白質の中ではその極めて細い突起が汎在基礎網(289~ 291頁参照)に移行している.グリア線維は(KühneおよびEwaldによれば)神経角質Neurokeratinからなる.

 上衣細胞Ependymzellenもやはりグリアに属するのではあるが,これをひとまず考えに入れなければ,グリア細胞は次の2つの主な形に分けられる.すなわち大グリア細胞Makrogliazellenと小グリア細胞Mikrogliazellenである.これらの主形にはおのおの2つの亜形がある.すなわち大グリアでは長突起細胞Langstrahlerと短突起細胞Kurzstrahlerと,また小グリアでは稀突起グリア細胞Oligodendrogliazellenとオルテガ細胞Hortegazellenとである. 第I巻,7476頁を参照せよ.

 グリア細胞の最も細い突起はいわゆる汎在基礎網“atlgemeines Grundnetz”(289~ 291頁参照)の構成にあずかっている.これらの突起はBauerによるとおそらく汎在基礎網の中に加わって,その抑制装置Hemmungsapparatをなしており,刺激の通路,刺激の集成および刺激抑制の過程に何らかの役割をしているのであろうという.

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最終更新日13/02/03

 

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