Rauber Kopsch Band2. 318   

 前索および側索からも多数の側枝がでて灰白質のなかに達している(図405).

 前索はその前皮質脊髄路(錐体前索路)から多数の側枝を同側の前柱に送り,これらの側枝は前柱の運動性細胞に終わっている.その錐体前索路の側枝が反対側の前柱の細胞に達することは一部の学者によるとその存在が唱えられているが,v. Lenhossék(1895)はこれが存在しないという.前索からの数多くの側枝は前皮質脊髄路の外側にある前索の部分からも来ている.この側枝は交連細胞群や,深いところにある中心部の細胞群に達し,前柱の内側部にある運動性の細胞群にも達している.さらにガワース路も前柱の運動性の細胞群の領域,および側柱の細胞に数多くの側枝を送っている.前側索のあらゆる部分のうちで最も豊富に側枝を灰白質の中に送るものは側索基礎束,さらに外側皮質脊髄路と脊髄小脳路である.外側皮質脊髄路からの側枝は運動性の細胞群に達しており,基礎束からの側枝は前柱あるいは後柱の細胞および中間部の細胞に達する.また脊髄小脳路からの側枝は中間部の外側部の細胞に達している(図400, 402).

D. 脊髄の全体的構造の概観

 中心管はおよそ脊髄の縦の軸のところを走っている.これは脊髄の横断面のだいたい中央にある.この管を被っている円柱状の上衣細胞はその線毛を中心管内に向けており,この細胞の外方に向かった大きな突起はおそらく脊髄の周辺にまで達しているのであろう.中心管および上衣細胞の細胞体を囲んでいる灰白質の部分,すなわち中心膠様質Substantia gelatinosa centralisは中心管とともに脊髄の中心性上衣糸zentraler Ependymfadenを作っている.その範囲にはわずかの交連細胞と索細抱が見られるだけである.中心管と前正中裂との間に腹側上衣懊ventraler Ependymkeilが伸びている.これは中心管の前壁の上衣細胞が作るものである.

 白前交連Commissura ventralis albaは多数の交叉する有髄神経突起よりなっている.これらの神経突起は次のものから出るのである.1. 前柱細胞の後内側群である交連細胞群からおこる(図400, 403, 405).その細胞の神経突起は反対側に移って,一部は灰白質に,一部は白質に達し,それも前索と側索に達するのである.2. 白前交連をとおるその他の神経突起は後柱の根部および頭部にある細胞から出ており,これらは他側のガワース路およびその他の側索の伝導路に達している(図405).3. この交連の中には錐体前索路の線維があり,これは他側の前柱の運動性の細胞に達している.

 灰白交連Commissura griseaのふくむ有髄線維はブルダッハ索の腹方部から出る知覚性の側枝であって,これはクラーク柱のすぐ内側を通りすぎ,正中線を越えて他側の後柱に入り,その終末分枝をつくる(図400, 405).

 前柱の細胞群のうちで,前内側,前外側および後外側の3群は運動性の細胞よりなるので,前根の起始核Ursprungskerne der ventralen Nervenwurzelnと呼ばれる.後内側群は主として交連細胞をもっている.また中心群には索細胞があり,その神経突起は前索および側索に達する.さらに前柱は運動性の根線維の初部や,前柱にある索細胞の神経突起や,上衣細胞の末梢がわの突起によって貫かれている.

 前柱と後柱との間には,灰白柱の中間部Mittelfeldがある.これには先ず第1に数多くの索細胞と,少数の交連細胞があり,さらに側索および後索からの側枝のかなり大きい束があり,また胸腰部ではクラーク柱からの神経突起の束がある.

 側柱には,その主要な成分として交感神経細胞および索細胞があり,前者の神経突起は前根線維の一部をなしてでている(図399, 405).

S.318   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る