Rauber Kopsch Band2. 323   

3b. 脊髄視蓋路Tractus spinotectalisは脊髄視床路とともに走る線維群であって,四丘体の領域で終わっている.

4. 三稜路Dreikantenbahn(Helweg)は前索の周辺にある線維束で,第3頚髄から上方で認められ,オリーブ核の側方の境のところに達している(図405).これはおそらく上下の両方向にみちびく線維,すなわち脊髄オリーブ路Tractus spinoolivaris(Bechterew)とオリーブ脊髄路Tractus olivospinalisをもっているのであろう.

5. 後索下行路Tractus descendens dorsalis=後索の卵円部ovales Hinterstrangfeld(Flechsig).

 これは頚髄の上部では散在性の線維であり,それより下方では後索の周辺部に狭い1つの縁をなしていて,仙髄では後正中中隔のそばで各側に半卵円形の部分を占める.これは脊髄円錐の灰白質の中で終り,その起始はまだ正確には知られていないが,おそらく上肢からの知覚性線維の下行枝で下肢への線維をだす根細胞および索細胞に終るのであろう.

II.脳Encephalon, Gehirn

1.形と位置

 脳は神経管の上部の太い部分であって,脊髄を被う3枚の被膜と同じものに包まれて神経頭蓋Neurocraniumの内部にあり,だいたいに頭蓋腔の形とよく似た形をしている.

 人の脳は頭蓋の形がいろいろ異なるのに伴なって,あるいはかなり球形に近く,あるいはいっそう楕円形に近い形をしている.どちらの場合にも脳底面Facles basialis encephaliという底面Grundflächeすなわち腹方の面ventrale Flächeは平らになっていて,その背方の大脳凸面Facles convexa cerebriは円く高まっている.

2.脳の区分Einteilung des Gehirnes

 脳は5つの部分よりなる.

I. 終脳Telencephalon, Endhirnすなわち半球脳Hemisphdrenhirn,

II. 間脳Diencephalon, Zwischenhirnすなわち視床脳Sehhügelhirn,

III. 中脳Mesencephalon, Mittelhirnすなわち四丘脳Vierhügelhirn,

IV. 後脳Metencephalon, HinterhirnすなわちBrückeと小脳Kleinhirn,

V. 髄脳Myelencephalon, Nachhirn, 延髄Medulla oblongata.

 IとIIとを合せたものが前脳Prosencephalonであり,

 IVとVとをいっしょにしたものが菱脳Rhombencephalonである.

 またI, IIおよびIIIを合せたものが大脳Cerebrum, Großhirnである.

3.大きさ,重さ,容積,表面積

(日本人の脳の大きさは報告者によりある程度の差はあるが,長径は男平均161.7~162mm,女平均152~155.4mm,幅径は男133~134mm,女平均124~128. 9mm,脳の比重は男平均1.0561,女平均1.0508,脳重は男平均1350~1400gr,女平均1200~1250 gr,脳の容積は男平均1326.48ccm,女平均1196.79 ccm.(小川鼎三,細川宏:日本人の脳,9~39頁,1953).

日本人の脳につき今までの研究者により報告された正常脳の最大重量は男1875gr,女1515 gr,最小重量は男1025gr,女961grである.(田口和美:本邦人の脳重量に就て,第1回日本聯合医学会誌,73~98,1902. 吉沢五郎:ふたたび本邦人の脳重量に就きて. 解剖学雑誌,3巻,797~810,1930).)

 矢状径(長径)は男では16~17cm,女では15~16cm,横径は14cm,垂直径は12.5cmである.

 灰白質の比重は1.029~1.039, 白質の比重は1.039~1.043,脳全体の比重は1.035~1.043である.

 灰白質は終脳の重さの37.7~39.0%, 白質は61.0~62.3%になる.このうち灰白質の約6%は神経核,33%は皮質の分である.

 両側の大脳半球の灰白皮質の容積は前障を含めて脳全体の容積の平均53.6%,大脳核のそれは3.6%である(Dahlberg, G., Upsala Lakar. förh., 28. Bd.,1923).成人の脳の水分含有量は平均79%である.灰白質は約85%, 白質は70%の水分をもっている.大脳皮質の灰白質の平均の厚さは2.5mmである.終脳の表面積はH. Wagnerは1876.72ないし2195. 88 qcmであるといい,R. Henneberg(Journal Psych. Neur.,17. Bd.,1910)は両半球で2226 qcmあり,1辺が約47cmの正方形に等しいという.--脳全体の容積を測定するとその平均値は1330ccmである.

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最終更新日13/02/03

 

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