Rauber Kopsch Band2. 345   

 灰白隆起の前方部は視神経交叉の存在のために第三脳室内に突出している(図410).視神経交叉の前では灰白隆起は第三脳室[灰白]終板Lamina terminalis cinerea ventriculi tertii,すなわち脳の灰白終板graue Schlußblatteに続いている.この終板が前交連Commissura rostralisにまで達する.視神経交叉の背側面とこの終板とのあいだには視束陥凹Recessus opticusがある(図410).

 間脳の底部の灰白質全体は,矢状方向では両側の乳頭体から第三脳室終板にまで延びて,10~12mmの長さをもち,脚間穿孔質と合せて脳底灰白交連graue Bodenkommissurと名づけられている.

 変異:灰白隆起の表てに幅の狭い(幅が約1mmの)1本の白い条,すなわち隆起白条Stria alba tuberisがときとして見られ,これは乳頭体のうしろの斜面に始まり,斜めに前外側に走って,視索の下で見えなくなる.Lenhossékによると.これは脳弓に属する線維束で表層を走るものであるという.

 灰白隆起は前下方に向かって延びて,前後からおされたロートの形をした中空の錐状部,すなわち漏斗Infundibulum, Trichterに続き,その先端に下垂体が付着している.漏斗の内部の空所は漏斗陥凹Recessus infundibuli(図410)と呼ばれる.漏斗の下端はいくらかふくらみ,かつ空所がなくて,これが下垂体の後葉である.

[図424]下垂体 Aは上方かつわずかに後方からみる.Bは水平断面,その切断された下片の上面を示す.×20

 下垂体Hypophysis, Hirnabhang(図410, 417, 424)は,長軸を横に向けた楕円体でその上面が平たくて,蝶形骨の下垂体窩のなかにあり,鞍隔膜Diaphragma sellaeという硬膜の特別な板に被われている(図445).この硬膜の板には穴がある.

 下垂体の色は灰白で赤色を帯び,その固さはかなりな程度である.これは神経葉(後葉)Lobus nervosus(Lobus posterior)すなわち神経性下垂体Neurohypophyseといううしろにある部分(これが小さい方の部分で漏斗とつながり円味を帯びている)と,腺葉(前葉)Lobus glandularis(Lobus anterior),すなわち腺性下垂体Adenohypophyseという前方にある部分(その後面がへこんでいる)とからなっていて,両者は由来を異にするものであるが,たがいに固く結合している(図424).前方にある腺葉は外面が灰白赤色であり,内部が灰白色であって,うしろにある神経葉は主としてグリアよりなり,腺葉よりも軟かく且つ淡い灰色である(図446).腺葉にはまた特別な部分として神経性下垂体に隣接する中間部Pars intermediaと漏斗の下端にある隆起部Pars tuberalisとが区別され,それらを除いた腺葉の主要な部分は主部Pars principalisと呼ばれる.

 下垂体の大きさの平均値は,幅(左右径)14.4mm,厚さ(前後径)11.5mm,高さ(上下径)5.5mmである.

 Rasmussen(Amer. J. Anat., 55. Bd, ,1934)によれば下垂体の絶対的な重量は妊娠していない女では,被膜,漏斗および隆起部を除いて,平均0.611gr(最小0.447gr,最大0.971gr)であるという.このうち80%が前葉,18%が後葉,1.5%が中間部である.妊娠中は前葉が大きくなる.

 視索Tractus opticus(図420)はいくつかの部分に分れて起り,これらの部分はいっしょにして視索放線Radiatio tractus opticiと呼ばれる.これは外側膝状体に(膝状体部pars geniculata),上丘に(中脳部pars mesencephalica),視床枕に(視床部Pars thalamica)達し,一部は直接に終脳皮質にも達している.

S.345   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る