Rauber Kopsch Band2. 349   

 手網が視床と会するところには,手網三角Trigonum habenulaeという三角形の場所があって,手網核Nucleus habenulaeという灰白質がここに存在する(図418, 421, 422, 428, 436).

 第三脳室脈絡組織は手網の自由縁に停止するのではなくて,松果体の上面において停止している.かくして第三脳室の第2の突出部ができる.これが松果上陥凹Recessus suprapinealisである.

 松果体じしんの中および第三脳室脈絡組織の中には多くのばあい黄色をした砂のような小体,いわゆる脳砂Acervulus, Hirnsandが見られ,これは燐酸石灰および炭酸石灰とある種の有機質の基礎よりなっている(図429, 447).

 後交連Commissura caudalis, hintere Kommissur(図410, 418, 428)は前方に凸を画いている板である.後方に向かって開いた溝が後交連窩Fossa commissurae caudalisと呼ばれる.後交連は背方では松果陥凹への入口により,また腹方では中脳水道への入口によって境されている(図410).

[図429]脳砂 松果体から分離したもの

第三脳室Ventriculus tertius, III. Ventriket(図408, 410, 418, 422, 428, 431433, 436)

 第三脳室Ventriculus tertiusは左右径の狭い腔所で,うしろはその幅がいくらか広く,前方は深くなっていて,間脳の諸壁のあいだにあり,前方は第三脳室終板,脳弓柱および前交連によって境されている.後方は中脳水道Aquaeductus mesencephaliに移行し,前方外側は室間孔Foramen interventriculareという脳弓柱と視床とのあいだにある卵円形の孔によって,両側とも終脳の側脳室に続いている(図408).第三脳室の中央を貫いて中間質Massa intermediaがある(図428).

 中間質は全例のおよそ1/5に欠如している.(日本人における中間質の欠如は平均19~20%のあいだである.その大きさは長さ4.0~1.40 mm,幅0.7~11.0mmのあいだにある.(常田信逸:邦人脳に於ける中間質に就て.北越医学会雑誌50年,1503~1505,1935))これはまた重複していることもある.その長さは第三脳室の幅如何に関係している.その横断面は形も大きさも非常にまちまちである.Tsuneda(FoL anat. Jap.,13. Bd.,1935)によれば, 中間質の存否に関してはヨーロッパ人と日本人とのあいだに何らの人種間の差異を認めない.

 第三脳室の特別な突出部としては次のものがある:すなわち三角陥凹Recessus triangularis,視束陥凹Recessus opticus,漏斗陥凹Recessus infundibuli,松果陥凹Recessus pinealis,松果上陥凹Recessus suprapinealisである(図408, 410).脳の正中断面では三角陥凹Recessus triangularisを除き,これらの諸陥凹を最もよく概観することができるが,三角陥凹は図428に示したような標本では最もはっきりと見られるのである.この陥凹は前交連と両側の脳弓柱とのあいだに存在している(図431).視束陥凹Recessus opticusは第三脳室終板と視神経交叉とのあいだにある.漏斗陥凹は漏斗のなかにあって,これは視神経交叉のうしろにある(図410).

 松果陥凹Recessus pinealisと松果上陥凹Recessus suprapinealisとについては上述(348頁)の松果体の項を参照せよ.

 第三脳室底の後部には中脳水道の正中溝の続きをなして正中を縦走する溝がある.第三脳室の左右の側壁には室間孔から中脳水道に達する視床下溝Sulcus hypothalamicusがある(図408).第三脳室の側壁は間脳の内側壁によって作られ,前壁は第三脳室終板と左右の脳弓柱よりなり,また両側の脳弓柱のあいだに露出している前交連もその形成にあずかっている.第三脳室の後壁は後交連と松果体の底とよりなる.また下壁は,後部が両側の中脳被蓋の前方部により,前部は脳底灰白交連によって作られている.上壁,すなわち第三脳室の蓋板は第三脳室脈絡叢をもっていて第三脳室脈絡組織Tela chorioidea ventriculi tertiiの一部をなしている(図408, 410, 432, 433).

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最終更新日13/02/03

 

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