Rauber Kopsch Band2. 363   

 室間孔から側脳室の前端まで達する前頭角は長さ約30mmであり,側脳室の後頭角は長さ12~20mm,側頭部は長さ30~40mm,頭頂部は長さ40mmである.前頭角の前端と後頭角の後端とは直線径で75~80mmたがいに離れている.左右の側脳室の背方部は後方に向かって相遠ざかるが,背方部は同時にS字形の弯曲を示し,その前方部は凸を内側に向け,後方部は凸を外側に向けている.(日本人における側脳室の大きさの平均値は,これを矢状面,前額面および水平面上に投影して計測した結果は次のごとくである.また鋳型模型による計測[( )内]も併記する.全長82.7mm(87. 6mm),全高49.5mm,全幅37.1mm,容積10.155ccm,前頭部の長さ24.8 mm(31.0 mm),頭頂部の長さ30.9 mm(33.4 mm),移行部後頭部の長さ27. 6mm(29.0mm),側頭部の長さ25.2mm(38.7mm),移行部の高さ29.2mm(37.8mm)である.(Shimada K. :Beitrlige zur Anatomie des Zentralnervensystems der Japaner. VI. Folia Anatomica JAponica, Bd,9, 429~486,1931))

側脳室の諸壁

a)前頭角Cornu frontale(図412, 414, 416, 418, 428, 430, 431)

1. 尾状核Nucleus caudatus, Schwezfflern.これは側脳室の底と外側壁の一部をなしていて,前頭角にある太い尾状核頭Caput nuclei caudati, Kopfと後方に向かってすすみ,さらに延長して下角に達する細い尾状核尾Cauda nuclei caudati, Schweifとよりなる.下角では尾状核尾はその天井の一部をなし,そして下角の前端で扁桃核に移行する.

 尾状核頭は最も幅が広いところでは2cmあり,前方は円くなって終る.その凸面は内側に向かっている.弯曲して下角に入るところでは尾状核尾は約3mmの幅があり,その幅は下前方にすすむにつれて減ずる.

2. 脳梁幹Truncus corporis callosiは前頭角の天井をなしている.脳梁膝Genu corporis callosiは側脳室の前壁をなし,かつ下壁の一部を形成する(図410).

3. 透明中隔Septum pellucidum.これは側脳室の前頭角の内側壁および頭頂部の前方部の内側壁をなしている(図414, 416, 418, 428, 430).

b)頭頂部pars parietalis(図412, 414, 428, 432, 433)

 頭頂部は丈が低くて,幅は15mmにまで達する裂け目であって,その天井は脳梁によって作られており,この天井が各側とも非常に鋭い角度をなして側脳室の底と合している(図432, 433).その底は外側部では尾状核によって形成されており,その内側につづいて順次に分界条Stria terminalis,視床を被う付着板Lamina affixa,側脳室脈絡叢Plexus chorioideus partis lateralis ventriculi telencephali,脳梁からはなれている脳弓(弓隆)Fornixの自由部の背側面がある.

1. 分界条Stria terminalis.分界条は視床と尾状核とのあいだを走っている幅の狭いすじで,このすじに沿って脳室面のすぐ下を走っている視床線条体静脈V. thalamostriataのために分界条はしばしば青味ないし褐色をおびてみえる(図412, 414, 428).

2. 付着板Lamina affixa(図428)は薄い脳物質の1層であって,まず視床線条体静脈を被い,ついでこれに隣接する視床の外側部の上に薄い板として続いている.さらに脈絡叢の上皮に移行するのである.付着板の幅は前からうしろに向かってまず幅を増し,ついでふたたび滅じ,その最大の幅は5~6mmである.脈絡叢を取り去ると付着板の内側縁がはっきりみえるようになる.この内側縁は視床脈絡ヒモTaenia chorioidea thalamiと呼ばれる(図428).

 視床脈絡ヒモは尾状核尾のそばに沿って下角の前端にまでつづいている.脈絡ヒモは下角では分界条に密接している.下角の前端において脈絡ヒモが曲がって采ヒモTaenia fimbriaeに移行し,次いでこれが脳弓ヒモTaenia fornicisになる.両側の脳弓ヒモはけっきょく室間孔の上で正中線で合している.

3. 側脳室脈絡叢Plexus chorioideus partis lateralis ventriculi telencephali(378頁).

4. 脳弓(弓隆)Fornix(371頁参照).

c)後頭角Cornu occipitale(図412, 414, 416, 423, 434)

 後頭角は外側に凸,内側に凹の1つの裂け目であって,その先端は後頭極に向かっている.横断面ではほず三角形をしている.

 その上壁脳梁放線Radiatio corporis callosiにより,下壁は後頭葉の髄質によって形成される.またその内側壁鳥距Calcar avis(図412, 423)という縦走する高まりをもち,この高まりは鳥距溝Sulcus calcarinus(図434)が深く入りこむことによってできたものである.

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最終更新日13/02/03