Rauber Kopsch Band2. 364   

後頭角の底は多くのばあい丸味をおびて高まっている.もっともその高まりの程度は個体により強弱の差がある.

d)側頭部(下角)Pars temporalis(図423, 433, 434)

 下角は三角形の横断面を示していて,海馬傍回鈎の前端より12mm離れた所まで達する.下角の底は後頭角の底の下前方への続きであり,外側には多少の差はあるがかなりの強さの縦走する1つの高まり,すなわち側副隆起Eminentia collateralisがあり,この隆起は後頭角との境のところで側副三角Trigonum collateraleとして始まり,側副溝が深く入りこむことによってできたものである.下角の天井は後頭角の天井と同じように主に脳梁放線によって作られている.両者のこの天井は特に壁板Tapetum と呼ばれ,ここの放線じしんは脳梁の壁板放線Tapetumstrahlungと呼ばれる.しかしなお下角の天井には内側部に尾状核尾があり,この核の内側面に沿って延びている分界条と脈絡ヒモとがある.

 下角の下壁と内側壁には海馬足Pes hippocampi(図423, 440)が長さ50mmの半月形に弯曲した高まりとして存在している.海馬足は脳梁膨大の高さで始まり,外側にその凸面を向けつつ前方にのびる.その前端部は幅が広くなっていて,ここに相並んでいる高まりがあり,これは海馬指Digitationes hippocampi, Zehen と呼ばれて,その数は変化に富むのである.

 しかしまた下角の内側壁には海馬足があるのみでなく,内側壁の一部は脈絡叢によって形成されているのである.

III. 終脳の灰白核

 大脳半球では灰白質が皮質を成しているほかに,なおこれとは別に灰白質の塊りが終脳の内部にあって,これは終脳の灰白核graue Kerne oder Ganglien des Endhirnesと呼ばれるのである.

1. 尾状核Nucleus caudatus, Schweifkern(図418, 428, 430, 434, 436)

 尾状核は頭の大きい棍棒の形をしていて,全く側脳室の経過に伴なっており,かつそれと同じ幅をもっている.これに尾状核頭Caput nuclei caudatiと尾状核尾Cauda nuclei caudatiとを区別する.

 尾状核の前部が最も太い.そして尾の先端に向かってこの核はだんだんとその大いさを減ずる.その背側面の内側稜が分界条にぶつかつておりその外側稜は側脳室の外側縁に達し,なお側脳室の中央部では鈎形にのびて側脳室の天井の外側部に達している.尾状核の外側面は内包に向けられ,尾の範囲ではその外側面が凸であるが,頭の範囲ではその外側面が逆に軽くへこんでいる.ここでは同時にその腹側縁が被殻Putamenのこれに対する腹側縁と直接に実質的なつながりを示している.この大きな腹方のつながりのほかにいっそう背方のところでは両核のあいだをつなぐ灰白質の条(結合条Verbindungsstreifen)が多数ある.これらの条の存在が両核およびそれらを結びつける部分に対して特に線条体Corpus striatumという名のあたえられたもとをなしている.

2. レンズ核Nucleus lentiformis, Linsenkern(図430434, 436)

 レンズ核はコーヒーの実の形をしていて,尾状核の外側にあり,この核とは広い隙間によって隔てられ,この隙間はレンズ核内包Capsula interna nuclei lentiformisという白質によって占められている.前下方で尾状核とつながり,また別に上述の結合条Verbindungsstreifenによって両核がつながっている.

 レンズ核の内側面は上方かつ内側に向かって傾いた位置を占めて,[レンズ核]内包に接している.またその外側面はだいたい垂直であるが軽く円蓋状にふくらみ,島の皮質に平行しており,[レンズ核]外包に接している.

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最終更新日13/02/03

 

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