Rauber Kopsch Band2. 368   

脳梁の中央部は脳梁幹Truncus corporis callosi, Balkenstammといい, またその前方部は強く前下方に弯曲して(図410),脳梁膝Genu corporis callosi, Balkenknieをなす.脳梁膝に続いて脳梁吻Rostrum corporis callosi, Balkenschnabelがあり,その薄い末端部が第三脳室終板にまで延びている.透明中隔の前縁と下縁とは正中線に沿って脳梁の膝と吻とに固着している.脳梁膝の前面には縦条の続きがみえ,これらのすじは脳梁吻の表てをたがいにはなれながらさらに進み,各側とも梁下回Gyrus subcallosusとよばれる小さい高まりとなって嗅野に達している(図408, 437).

 脳梁の後端は厚くなり,脳梁膨大Splenium corporis callosi, Balkenwulstを作る.しかし,ここをよく注意して見ると,脳梁の前端といくらか似た点がある(図441).後端のところでも脳梁はまるく曲がって,その曲つた部分が下面に密接している.こうして2重になっているために厚い脳梁の後端部は厚さが1.5~1.8cmあり,自然の位置では松果体と四丘体とを上から被っているのである(図410).

 前に述べた細い縦条と脳室の上衣を考えに入れなければ,脳梁は本質的には横走線維だけからなっており,この線維群は大脳半球の内側壁に入りこんで,そこで脳梁放線となる.これらの横走線維群は相合して多数の前額の方向におかれた葉板(その厚さ1mm)をなしている.脳梁の膝と膨大ではそこに所属する葉板が放射状に傾いている.

b)脳梁放線Radiatio corporis callosi, Balkenstrahlungには,脳梁幹Truncus corporis callosiに属する中央部と脳梁膝Genu corporis callosiに属する前方部と脳梁膨大Splenium corporis callosiに属する後方部とが区別される.脳梁幹Balkenkörperの放線は前頭葉の後部に(前頭部Pars frontalis),また頭頂葉の全体に(頭頂部pars parietalis)分布する.脳梁膝からは前頭葉の前方の大部分に分布する(図441, 442).

 脳梁幹の後部と脳梁膨大とからは後頭葉と側頭葉に分布するのであって,これがそれぞれ側頭部Pars temporalisと後頭部Pars occipitalisである.脳梁膨大に境を接する脳梁幹の部分からの線維団は外側に凸の弓を画いて外側かつ下方にすすみ,側脳室の後頭角と下角との背方壁のなかで,上衣の下に広がった1枚の板となって走り,これは壁板Tapetumと呼ばれる.

[図442]脳梁放線Radiatio corporis callosi(模型図).

 1. 前頭部Pars frontalis;2. 後頭部Pars occipitalis;3. 大脳半球の皮質;4と5. 半球間裂.

 壁板は側頭葉にゆく線維と後頭葉の下部にいたる線維とを含む.脳梁膨大の線維は特に後頭葉の後部と背方部とに達し,そのうち後部に向うものは脳梁膨大の下方に曲つた部分の線維束であって,そこが脳梁の最後部をなしている.

 脳梁は部分的にあるいは完全に欠如していることがある.(日本人において脳梁欠損は3例が報告されている.その3例とも半球内側面で脳溝の放線状配列が著しかつた.(北里勇三:無症状に経過せる成人胼胝体欠損の一例.長崎医学会雑誌.17巻, 2261~2277,1939 ;. 藤原正明:胼胝体完全欠損例.解剖学雑誌. 21巻, 294~296,1943;唐笠正二:大脳勝賦体の完全欠損例.日本病理学会会誌. 31巻,103~107,1941).)これまでにそのような例が約100例も記載されている.その大多数のものは同時にその他の脳の重要な奇形を伴なっていた.Hultkrantz(Upsala Läkareför. förhand. Nyföljd., 26. Bd.,1921)がしらべた例は,脳梁が欠けていても脳の機能の目立った障害がないことがありうることを示している.脳梁の発育不全の1例をH. v. Hayek(Virchows Archiv, 273. Bd.,1929)が記載している.

b)前交連Commissura rostralis, vordere Kommissur

 前交連は脳梁の補足をなして,第三脳室の前壁にあり,両側の脳弓柱のあいだで短くて白い横走の梁として見える(図428, 431).脳の正中断面では,前交連は楕円形の輪郭(5:4mm)をもっている(図410).

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最終更新日13/02/03

 

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