Rauber Kopsch Band2. 371   

6. 脳弓(弓隆)Fornix, Gewölbeは皮質乳頭路Tractus corticomamillarisというべきで,海馬傍回鈎の皮質から乳頭体に達している.脳弓の初まりの部分がふくむ線維の一小部分は嗅傍野に終り,これは長い脳弓Fornix longusと呼ばれる.

 この長い脳弓は連合神経路(366頁参照)に属するわけであり,他方皮質乳頭路は投射神経路に属するのである.

脳弓(弓隆)Fornix, Gewölbe(図410, 414, 416, 423, 428, 431437, 440)

 脳弓は対をなしていて,背方に凸の弓を画いて走り,乳頭体から海馬傍回鈎にまで達する.この2つの場所は脳弓の両蹠点とみなしうる(図437, 440).

 脳弓はかくれている部分verborgener Teilと露出している部分freier Teilとよりなる.後者は脳弓柱Columna fornicisとして始まる.かくれている部分,すなわち脳弓柱没部Pars tecta columnae fornicis(図410)は第三脳室の底と側壁のなかにあって,そのがわの乳頭体にまで達している.露出している部分は前交連のすぐうしろで始まり,これは脳弓柱出部Pars libera columnae fornicisとして第三脳室の側壁から上行して,室間孔Foramen interventriculareを前から境し,前下方に開いた弓をなして大脳半球内側面の凹んだ内方縁の全長を円蓋状に走り,側頭葉の前端にまで達する.その経過の前部と後部とでは左右の脳弓がたがいに離れている(図416, 428)が,中央部では脳梁の下面の下でたがいに密接しており,ここでは脳弓体Corpus fornicisをなしている.さらに後方では脳弓体の左右両半がふたたび離れて,それからは脳弓脚Crura fornicisと呼ばれる.脳弓脚は視床枕のうしろで曲り側脳室の下角のなかに達し,一部は海馬足に移行し,一部は海馬采Fimbria hippocampiとなる(図423).この海馬采は海馬足と結合していて,これに伴って下角のなかをすすみ海馬傍回鈎にまで達する(図435).

 脳弓体は第三脳室脈絡組織の上にある.その外側縁,すなわち脳弓ヒモTaenia fornicisは側脳室脈絡叢と結合し,采ヒモTaenia fimbriaeに続いている.

 側方は左右の脳弓脚によって境されて,そのあいだに張り,主として横走する線維よりなる薄い髄板があって,これが脳梁の下面を被っている.この髄板はしばしば脳梁と完全に癒合しないで,ヴェルガ腔Vergasche Höhleという1つの小さい裂隙Spaltraumによってそれから隔てられている.

 両側の脳弓柱は卵円形の横断面をもち,脳弓体は三角形であり,脳弓脚は扁平である(図428, 431, 432).

脳弓柱出部の長さは海馬采の前端まで測ると約9cmである.

 脳弓の根としてヴイック・ダジール束Vicq d’Azyrsches Bündel,すなわち乳頭視床束Fasciculus mamillothalamicus(図410, 440)が視床前結節に達している.

B. 長い投射神経路(脳脚系Hirnschenkelsysteme)

 長い投射神経路は大脳皮質から起こって中断することなく,内包および大脳脚を通って橋・延髄・脊髄にあるその終末部に達する.

1. 皮質脊髄路(錐体路)Tractus corticospinalis (Pyramidenbahn)は中心前回と中心傍小葉の皮質ならびにこれに続く上前頭回の部分で始まり,内包の膝と後脚との領域を通り,大脳脚を横の方向に5等分したばあい,その第2から第4までを成して(図468),中脳・後脳・延髄および脊髄の運動性の諸核に終る.

2. 皮質橋核路Tractus corticopontini, Brückenbahnenは,a)前頭部(前頭橋核路)Pars frontalis (frontale Brückenbahn) (アーノルド束Arnoldsches Bündel)は上および中前頭回の皮質で始まり,内包の膝および前脚の領域を通り,大脳脚ではその内側1/5を占めて,橋核の腹方部に終る.

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最終更新日13/02/03

 

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