Rauber Kopsch Band2. 373   

XI. 副神経N. accessoriusは脳の部分と脊髄の部分,すなわち延髄根Radix myelencephalicaと脊髄根Radix spinalisとよりなる(図409, 417)

 脊髄根は6~7本の根束からなっていて,この根束はたがいに広い隔たりをもって頚髄から出るのであって,最後の根糸は第6頚神経の高さで表面に達する.

これらの根糸は走りながら次第に合して1本の幹となる.根束はその初まりのところでは歯状靱帯の背方から出る.第1頚神経に至るまでは根束の出る場所は絶えず脊髄神経の後根に近づいてゆき,第1頚神経では後根とほとんどいっしょになるほどであらて,従って1本の束が2つに分れて副神経と第1頚神経になることもある.副神経の延髄根は4~5本の束をなして,迷走神経根の下方に続いて,後外側溝で延髄からでている.

XII. 舌下神経N. hypoglossusは10~15本の根糸をもって延髄を去る.その根糸は1本の縦の列をなして延髄の前外側溝から外にでて合して2本の束となる(図409, 417).

6.脳の被膜,髄膜Meninges

 脳の被膜は脊髄の項で述べたのと同じものである.

A. 脳硬膜Dura mater encephali=Pachymeninx (図445)

 脳硬膜は脳の外方をつつむ被膜であると同時に頭蓋骨の内面を被う骨膜(頭蓋内膜Endocranium)でもある.

 子供では頭蓋の内面に比較的かたく付着し,成人では多くの場所で頭蓋骨とゆるい結合をしているに過ぎない.しかし頭蓋縫合のところおよび特に蝶形骨体と後頭骨体とにおいては,成人でもその結合が密である.脳硬膜の外面は骨と結合する線維束のために粗であり,内面は平滑であって,かつ光沢がある.内面は完全に内皮に被われ,外面は骨と結合する線維束の間だけが内皮に被われている.

 硬膜の平滑な内面は次に述べるものによって他の脳膜と結合している:すなわち,1. 硬膜内の静脈洞に達する多くの脳静脈Hirnvenenにより;2. 脳膜顆粒Granula meningica, Arachnoidatzotten, (クモ膜絨毛の意),すなわちパッキオニ顆粒Pacchionische Granutationenによって結合する.

 硬膜が2枚に分れていることは多くの場所に見られる:すなわち,1. 静脈洞のところ;2. 側頭骨錐体の前面にある半月神経節腔Cavum ganglii semilunarisのところ;3. 側頭骨錐体の後面で,膜迷路の一部である内リンパ嚢のところ;4. トルコ鞍の内部で下垂体のところである.

硬膜の諸突起

a)外方への突起:脳神経の硬膜鞘Durascheiden. 脊髄硬膜が脊髄神経に鞘をあたえているのと同様に,脳硬膜は脳神経に丈夫な鞘をあたえている.

 この鞘の初まりの部分はロート状であって,脳膜漏斗Infundibula meningicaと呼ぶことができる.この漏斗は三叉神経では特に大きく,半月神経節とこれに隣接する根線維の端とがともに硬膜とクモ膜の作る1つの平たい嚢に包まれて,三叉神経圧痕の上にのっている.また顔面神経と内耳神経の根における脳膜漏斗も大きくて,この両神経根は内耳道のなかで硬膜とクモ膜の作る管状の突起に包まれている.脳膜漏斗はもちろん硬膜下腔と軟膜腔の膨出部をも含み,この両者は三叉神経の根束と半月神経節のところ,および内耳道の内部で特に広がっていて,このことは実地医学に大きな意義を有っている.(Ferner, H., Z. Anat. Entw.,114. Bd.,1948).

b)内方への突起:内方への突起は矢状方向にのびている2つと横の方向にひろがっている2つとがあって,これらによって頭蓋腔は脳の主要部分に一致したいくつかの小室に不完全に分けられている.矢状方向の突起は脳鎌Hirnsicheln,すなわち大脳鎌Falx cerebriと小脳鎌Falx cerebelliと呼ばれ,横の方向の突起は小脳天幕Tentorium cerebelliと鞍隔膜Diaphragma sellaeとである.(鎌の音は「レン」,訓は「カマ」であるが大脳鎌,小脳鎌などでは訓で読む方が判りやすい.(小川鼎三))小脳天幕はこれに被われた下方の頭蓋腔を上方の頭蓋腔から決して完全に閉ざしてはいない.この開いている口の前方の境界をなして鞍背があり,外側かつ後方の境界は小脳天幕の前縁にある深い切れこみ,すなわち天幕切痕Incisura tentoriiによって形成されている.

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最終更新日13/02/03

 

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