Rauber Kopsch Band2. 374   

1. 小脳天幕Tentorium cerebelli,  Kleinhirnzelt(図445)

 小脳天幕は背方に円みをおびて突出して,かたく張っており,終脳の後頭葉の底面と小脳の背方面とのあいだに横の隔壁をなしている.その後縁は凸を画いていて,1. 後頭骨と頭頂骨との横溝に固着し,ここでは横静脈洞をその中に包んでいる.2. 側頭骨錐体の上縁(錐体稜)に固着し,ここでは上錐体静脈洞を包んでいる.

 小脳天幕が大脳鎌と合するところに直静脈洞Sinus rectusがあり,これは後方でいわゆる静脈洞交会Confluens sinuumに開口しており,前方では大大脳静脈と合している.

2. 大脳鎌Falx cerebri, Großhirnsichel(図445)

 大脳鎌は正中にあって,鶏冠から内後頭隆起にまで延び,半球間裂に一致して両側の大脳半球のあいだに深さ約3cm入りこんでおり,脳梁からわずか2mmはなれているにすぎない.これは鎌形であり,矢状方向にのびた2面をもって,そのおのおのが大脳半球の内側縁に向かっている.また大脳鎌は外方(上方)の頭蓋冠の内面に固着している凸縁と内方(下方)の凹を画く遊離縁とをもっている.

 その凸縁は前頭稜に付着し,また頭蓋冠の矢状溝の側縁に付着して,後方は内後頭隆起まで達している.硬膜の内・外両板のあいだに囲まれた腔所すなわち上矢状静脈洞Sinus sagittalis superiorは三角形の横断面を有っている.その凹をなす縁は前者よりいっそう強い弯曲を示し,かつはるかに短い.その中には弱い下矢状静脈洞Sinus sagittalis inferiorがある.大脳鎌が直静脈洞に沿って,小脳天幕に移行する縁は大脳鎌の天幕縁Zeltrandをなし,その反対の方で鶏冠に固着している縁は大脳鎌の鶏冠縁Kammrandをなしている.

3. 小脳鎌Falx cerebelli, Kleinhirnsichel

 小脳鎌は頭蓋円蓋の後下部にあって,大脳鎌に続く,やはり矢状方向の小さい突出部である.これはBasisを有ち,この底が小脳鎌を小脳天幕と結合させている.また小脳鍬には外方(後方)の凸縁と凹を画く内方(前方)の縁とがある.その凸縁は後頭静脈洞Sinus occipitalisを包んで骨に固着している.

4. 鞍隔膜Diaphragma sellae, Hypophysendach

 この硬膜葉は海綿静脈洞の自由壁を作っていて,トルコ鞍の上を横に越えて他側のものと合して橋をなし,漏斗が貫くために[]隔膜孔Foramen diaphragmatis[sellae]という小さい孔が中央にあいているだけである.トルコ鞍を被っている硬膜の上・下両葉のあいだに包まれて下垂体が存在する.

 微細構造. 脳硬膜の微細構造は脊髄硬膜のそれと大体において一致している.脳硬膜の主要成分は密に組み合った結合組織束である.硬膜の外方部は内方部すなわち脳に向かったがわのものとは違った線維の走り方を示している.内層の線維は主として前内側から後外側の方向に走り,外層のものは前外側から後内側の方向に走っている.そのほかに刷毛状に横の方向に広がる線維群もあって,この横走線維群は脳鎌の起始に当たっている.脳膜顆粒の増殖によって硬膜はところどころはなはだ薄くなっていることがあって,そのため篩状に孔があいているように見える.脳鎌では結合組織の線維が底の前端から凸縁に向かって半径状radienartigに放散しているし,小脳天幕では線維が前者と同じ場所から外側に向かって走っている.

 これちの線維系の機能的意義についてはBluntschli, Arch. Entwmech.,106. Bd.,1925を参照されたい.

 脳硬膜はいろいろなところから動脈を受ける.その動脈としては特に硬膜動脈Aa. meningicae,両側の後頭動脈と椎骨動脈とが出す硬膜枝Rr. meningiciをあげなくてはならない.これらの動脈は外葉のなかを走り,ごくわずかな結合組織だけで骨から隔てられていて,骨学ですでに知ったように,その一部が骨にはっきりしたFurchenを生ぜしめている.これらの動脈はふつう2本の静脈を伴なっている.

 リンパ管としては硬膜のなかに1つの液路系Saftbahnsystemがある.硬膜の組織内に穿刺することによって,この液路系に注入することができる.そのさい注入されたものが硬膜の脳に向かった面に(すなわち硬膜下腔に)たやすく流出する(Michel).

 硬膜の神経は三叉神経,迷走神経,舌下神経および交感神経の細い枝からなっている.それには血管運動性の神経vasomotorische Nervenと硬膜に固有の神経eigene Nerven とが存在するのである.

S.374   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る