Rauber Kopsch Band2. 378   

 脳膜顆粒は数も大きさもすこぶるまちまちであり,子供では欠けている.KeyおよびRetziusによれば脳膜顆粒をへて漿液性の液体がクモ膜下腔から硬膜の静脈洞に移行することがいっそう容易におこる.

 脳膜顆粒の意義としては単純な機械的な役目も考えられる.つまりクモ膜と柔膜および脳表面を硬膜および頭蓋冠に固着させるためのボタンに類するものknopfartige Befest igungsmittelとみなす人がある.--Bluntschli(Morph. Jahrb., 41. Bd.,1910)は霊長類のなかでも高等なものほどクモ膜絨毛がいっそう多く存在し,かつ高等な分化をしていることを確かめた.

 硬膜が突起を出しているように,クモ膜ももろもろの神経根にクモ膜鞘Arachnoidalscheideという鞘状の突起を送りだしている.この突起はやはり三叉神経の半月神経節とその根線維の領域,ならびに内耳道の内部では特に大きくて,これらの場所では軟膜腔がかなり大きい陥凹を作っている(373頁参照).これによって脳と脊髄をつつむ硬膜下腔およびクモ膜下腔が神経のリンパ路とつづき,またこれを介して神経以外のリンパ路ともつづいていることが理解できる.かくして脳のクモ膜下腔から,たとえば鼻粘膜のリンパ管,視神経のまわりの腔所,耳の迷路の外リンパ腔を人工的に満たすことができるのである.Iwanow, G., Arch. russ. Anat.1929.

 脳と脊髄のクモ膜下腔は次の3カ所で脳内部の脳室系と続いている:

1. 菱脳正中口Apertura mediana rhombencephaliにより,また

2. および3. 対をなす菱脳外側口Apertura ateralis rhombencephaliによる,柔膜の項参照.

2. 脳柔膜Pia mater encephali(図448)

 柔膜は脳の表面に密接して,脳のあらゆる溝と裂け目の奥まで入りこみ,また脈絡組織と脈絡叢の結合組織層をなすが,そのさい脳室腔とは脳の上皮性の壁,すなわち蓋板Lamina tectoriaによって隔てられている.

 柔膜の外面には小さい血管がかたく付着している.軟膜槽の領域では,脊髄におけると同じような関係がみられる.血管はそれより先の経過では,すでに 305頁に記載した関係を示す,すなわち柔膜漏斗Piatrichterおよび外膜鞘がある.これらの鞘と血管壁とのあいだにある管状の腔所はクモ膜下腔と直接に続いている.

 特別な構造としては脈絡組織と脈絡叢とがある.

a)第三脳室脈絡組織Tela chorioidea ventriculi tertii.(図416, 432, 433, 450)

 これは二等辺三角形の形をしており,その尖端は前方に向かって脳弓柱に達し,底は後方に向かっていて脳梁膨大のところにある.この脈絡組織は背腹の両部分よりなって,この両部分はクモ膜下組織によってたがいに結合している.側方では背方部が折れ曲がって腹方部に続く.その折れ曲る縁は終脳の側脳室のなかに突出する側脳室脈絡叢Plexus chorioideus partis lateralis ventriculi telencephaliがあるのではっきりしている.この脈絡叢は側脳室のなかで室間孔から下角の前端にまで伸びている.側副三角のところでは,この脈絡叢が脈絡糸球Glomus chorioideumというかなり大きい塊りをなしている.左右半球の側脳室脈絡叢は前方では,腹方に曲がって左右の室間孔のあいだにある狭い場所のなかに入り,ここで両側のものがたがいに移行する.またそこで後方に向かって左右の1対が相接して並ぶところの幅の狭い第三脳室脈絡叢Plexus chorioidei ventriculi tertiiを送りだしている.その関係は図432, 433, 450で明かに知られる.

 側脳室脈絡叢の外側稜は視床脈絡ヒモに,内側稜は脳弓ヒモすなわち脳弓の外側縁に付着している(図450).この脈絡叢の上皮はその付着線に一致するところで,いま述べた諸構造を被う部分に続くのである.左右の第三脳室脈絡叢は側方では視床髄条に付着している.さらに後方ではその付着部が手網となり,ついで松果体の上面に移行する.

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最終更新日13/02/03

 

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