Rauber Kopsch Band2. 401   

 橋底部Pars basialis pontisは全横断面積の半ばをはるかに越える大きさである.そこにある縦走線維束は著しく増加し,これらは縁のところでまとまつた集り方をなしはじめている.

 橋背部の上方には非常に小さくなった第四脳室がある.その底の灰白質には正中線のそばに縫線背[側]核Nuclgus dorsalis rhaphesがあり,側方には色素を豊富にもうた神経細胞の2群があり,これが菱形窩の上部に,青斑Locus caeruleusを生ずるもとをなしている.この神経細胞群の外側には横断された細い神経線維(この線維は細くない,むしろ太い方である.(小川鼎三))の集まった幅の狭い鎌形の部分すなわち三叉神経中脳路Tractus mesencephalicus nervi trigeminiがある.その線維のあいだには大きな円い単極の神経細胞があって,これが三叉神経中脳核Nucleus accessorius (mesencephalicus) n. trigeminiである.縫線背[側]核の腹方には今やはなはだはっきりと境された内側縦束Tractus longitudinalis medialisが見られる.

 青斑の細胞は多くの学者により三叉神経起始核Nucleus originis n. trigeminiとみなされ,また他の学者は三叉神経終止核Nucleus terminalis n. trigeminiとみなしている.(青斑の細胞群はおそらく三叉神経と直接の関係がないであろう.(小川鼎三))

第四脳室の天井は,この高さでは前髄帆によって形成され,滑車神経交叉Decussatio nervorum trochleariumがその中にある.右側には脳から出てゆく滑車神経の線維束が切られている.その同じ場所に斜めに切られた楕円形の線維束がある.これは反対がわの滑車神経に属する線維であって,交叉したのちにまず外側にすすみ,次いで上方かつ内側腹方に走る.それが滑車神経下行部Pars descendens nervi trochlearisである.

 三叉神経中脳路の外側にある横断された神経線維の密な集りは結合腕Brachium conjunctivumである.この線維団の一部が内側腹方にすすんで正中線に達し,ここで交叉している.これが結合腕交叉Decussatio brachiorum conjunctivorumである(また小脳大脳脚交叉Decussatio crurum cerebello-cerebraliumあるいは大被蓋交叉große Haubenkreuzungとも呼ばれる).両側の結合腕に囲まれた明るい部分には,側方に視床オリーブ路Tractus thalamoolivarisがあり,また正中線に接して上中心核Nucleus centralis superiorがある.結合腕の側方には外側毛帯Lemniscus lateralisがあり,その内部に外側毛帯核Nucleus lemnisci lateralisが見られる.外側毛帯の腹方には脊髄視蓋路Tractus spinotectalisがあり,脊髄視蓋路のさらにいくらか内側に赤核脊髄路Tractus rubrospinalisがある.

 内側毛帯Lemniscus medialisは正中線から遠く離れ,その外側部は橋の外面のすぐ下にある.その横断面はここでは平たくて幅の広い帯状である.

13. 橋Pons,横断面V(図467)

 この断面は下丘を通り,中脳水道を横断している.滑車神経下行部は図466に示した場所よりますます腹方に位置が変わっている.そして中脳水道を回って腹方に走り,けっきょく滑車神経核Nucleus briginis nervi IVに達する(図467).この核は正中線のすぐ近くで,内側縦束に囲まれている.レンズ状をした下丘核Nucleus colliculi caudalisが 図467でははっきりと見える.

 両側の結合腕は滑車神経と同じように中脳水道を回って腹方に走り,結合腕交叉に達する.この交叉は上方に行くほどますます強大となる.外側毛帯 Lemniscus lateralisと視蓋脊髄路Tractds tectospinalisとは下丘のなかに達する.視床オリーブ路Tractus thalamoolivarisと内側毛帯Lemniscus medialisは前の断面とほぼ同じ位置を占めている.これに反して赤核脊髄路Tractus rubrospinalisは内側に位置が変わっている.

 橋底部においては横走線維群がますます少くなり,縦走線維束が側方および腹方で密な集まりをなして配列している.

14. 中脳,横断面I(図469)

 次の断面は背方は上丘の領域,腹方は大脳脚を通る.四丘体では層形成瀞みられる:すなわち上丘の表面のすぐ下には有髄神経線維の薄い1層があり,ついで上丘灰白層Stratum griseum colliculi rostralisどいう灰白質の1層があり,その次に上丘核;Nucleus colliculi rostralisがある.

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最終更新日13/02/03

 

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