Rauber Kopsch Band2. 403   

 黒核は大脳皮質(弁蓋),淡蒼球および上丘と2重方向の結合をもっている.また感覚伝導路からの線維(内側,外側両毛帯からの側枝)を受け,赤核に線維を送り,赤核脊髄路を通って脊髄の運動性の根細胞にはたらくのである.

 上丘に入ってくる伝導路は嗅覚,視覚,聴覚を伝える線維および身体の末梢部からの線維である.嗅覚を伝える線維は脳弓(弓隆)を通り(皮質乳頭路Tractus corticomamillaris),乳頭体をへて,あるいは手網核および脚間核Ganglion intercruraleを通って来る.視覚をみちびく線維は視索から来る(図504).聴覚を伝える線維は外側毛帯の側枝である(図501).身体の末梢部からの線維は内側毛帯と三叉神経のいわゆる“2次”径路“sekundäre”Trigeminusbahnおよび脊髄視蓋路の線維である.

 上丘から出てゆく伝導路は次のものである:視蓋脊髄路,黒核に達する線維,小脳あるいは赤核をへて行くものである.視蓋脊髄路は視覚一聴覚反射路であり,これは背側被蓋交叉dorsale Haubenkreuzung(図469)で他側に移つた後に,内側縦束のなかを下方に走る.その線維は延髄の網様質および脊髄に終るのである.

15. 中脳,横断面II(図470)

 ここに述べる最後の断面であるが,それにはもはや内側膝状体がみられる.この高さでは左右の動眼神経核のほかになお中央部にある2,3の核,すなわち動眼神経(副交感性)副起始核Nuclei originis accessorii(parasympathici) n. oculomotoriiがみられ,(いわゆるエディンガー・ウェストファール核Edinger-Westphalscher Kernのことである.(小川鼎三))腹方では動眼神経の根線維が出てゆくのがみられる.大脳脚は,前に述べた断面とくらべて少しも変わっていない.被蓋では赤核Nucleus ruber, roter Kernが結合腕の領域に現われている.赤核においそ小脳の歯状核から来る結合腕の線維が終る.赤核の主要な部分をなすものは散在性の小さい神経緬胞である.赤核の下部は運動性の大形の細胞をもっていて,この大きい細胞から赤核脊髄路Tractus rubrospinalis(モナコフ束Monakowsches Bündel)が始まり,この線維は赤核から出て間もなく正中線で交叉する.これが腹側被蓋交叉ventrale Haubenkreuzung(Forel) (図468, 469)である.交叉したのち橋と延髄を通って下方に走り,脊髄に達している(320頁参照).赤核の上端からは線維束が出て視床と内包とに達する(被蓋放線Haubenstrahlung).

 赤核にやって来る線維束は大脳(前頭弁蓋Operculum froptale)からのもの,小脳(歯状核Nucleus dentatus)から結合腕を通つつてくるもの,また視床(視床赤核オリーブ路Tractus thalamorubroolivarisすなわち中心被藍束zentrale Haubenbahn),淡蒼球, 黒核(その網様帯Zona reticularis),上丘から来るものがある.

 赤核から出てゆく線維束は次のものである:すなわち赤核脊髄路Tractus rubrospinalis,赤核網様体路Tracttis rubroreticularis,赤核オリーブ路Tractus rubroolivaris,赤核視床路Tractus rubrothalamicus,赤核頭頂路Tractus rubroparietalis(頭頂弁蓋にいたる)である.

[図468]皮質延髄路と皮質脊髄路が中脳の横断面において占める位置(ObersteinerおよびMingazziniによる)

Aq 中脳水道;Brpq 下丘腕;Cgm 内側膝状体;F 腹側被蓋交叉ventrale Haubenkreuzang(Forel);Fcop 後交連からの線維束;Flp 内側縦束;Lm内側毛帯;M背側(噴水状)被蓋交叉 dorsale(fontaineartige) Haubenkreuzung(Meynert);Nga 上丘の白質と灰白質;Ntg 赤核;N III動眼神経核;Pcm乳頭体脚Pedunculus corporis mamillaris;pl黒核の網様突起Processus reticularis nuclei nigri; Pp 大脳脚;Qa 上丘;Sns黒核(黒質);zc緻密帯=“黒色部”(Spatz);zr網様帯=“赤色部”(Spatz);1 前頭小脳路および小脳前頭路frontocerebellare und cerebellofrontale Bahn;2 前頭橋核路 Tractus corticopontinus frontalis(Arnold);3 皮質延髄路および皮質脊髄路; 4 後頭側頭橋核路Tractus corticopontinus occipitotemporalis (Türck);5 Zone des Lemniscus(毛帯の部分);6 中間層Stratum intermedium;7Pes lemniscus superficialis(浅毛帯足).

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最終更新日13/02/03

 

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