Rauber Kopsch Band2. 406   

b)小脳皮質Kleinhirnrinde

 新鮮な小脳皮質Substantia corticalisを切断してみると肉眼的に2層が認められる.灰白色に見える外方の層は灰色層Stratum cinereum, Molekularschichtであり,黄色ないし錆色に見える内方の層は顆粒層Stratum ferrugineum, Körnerschichtである.顕微鏡的には灰色層の外表面に浅境界膜Membrana limitans superficialisがあり,灰色層と顆粒層との境にはなお特別な1層があり,これはプルキンエ細胞Purkinjesche Nervenzellenの層,すなわち神経細胞層Stratum gangliosumである.

 錆色の顆粒層は髄質稜にすぐ接していて,密集する小さい細胞の群よりなり,これらの細胞は,球形の核をもっていて,細胞形質はごく少ない直径6~7µのものである(図471).しかしこれらの小細胞はいく本かの小さい樹状突起の小幹と灰色層に入りこむ1本の神経突起とを送りだし,この神経突起はたがいに反対の方向にのびる2本の枝に分れて,それが灰色層のなかで小脳回転の縦の方向に沿ってのびている(図472).

 プルキンエ細胞Purkinjesche Zellen(図471, 3)の層は西洋ナシないし棍棒状をした大きな神経細胞の1層よりなり,この細胞はその最大の直径を顆粒層に垂直ないし斜めに向けている.その太い方の端はいくぶん顆粒層のなかに突出し,ここで顆粒層を貫いて走る1本の神経突起を送りだし,この突起は直ちに髄鞘に包まれて髄質稜のなかに入る(図472).細胞の外方に向かった極は1本あるいは2本の太い樹状突起の幹に移行して,この幹は(シャンデリアのように)はなはだ豊富に枝分れし,その終末分枝は放線状に灰色層のなかに入りこんでいる.小脳回転ののびる方向に対して横断する面の上でその主な枝分れが起こっている.そのさい比較的大きな突起は通常ある距離だけ水平あるいは斜めに走り,その間に放線方向の枝をだすことによって次第に細くなり,終りにこの突起の幹じしんが放線方向に曲るのである.小脳回転の頂きでは,プルキンエ細胞が小脳溝の底におけるよりもいっそう密に存在するのである.細い終末分枝は表面の近くにまで伸びている.またこの細胞の神経突起は小さい側枝をだし,この側枝は顆粒層内に入るが,その一部がプルキンエ細胞の細胞体のところにもどってきて,そこで終末分枝となっていることがまれではない. 灰色層graue Schichtは分子層molekulare Schichtともいわれ,これは細かい顆粒状をなす層で,ここは一部は樹状突起の分枝と神経突起の分枝とよりなり,一部はグリアおよび神経細胞よりなる.また有髄神経線維の叢が切線方向に広がっていて,これはプルキンエ細胞の層と顆粒層との境にみられるのである(図471, 2).

[図471]ヒトの小脳皮質の断面(TH. Meynert).×150

1 小脳皮質の灰色層および2横走する極めて細い有髄神経線維;3 プルキンエ 細胞;4 顆粒層;5 髄質稜の一部.

 灰色層の神経細胞のうちの1種,すなわち小皮質細胞kleine Rindenzellen(図472)はおそらく軸分枝細胞Cellulae axi-ramificataeであろう.別の種類は大皮質細胞große Rindenzellenであって,これはあらゆる方向に樹状突起を送りだしているが,その神経突起はプルキンエ細胞層に平行して走る.この神経突起はある間隔をおいて側枝をだし,この側枝がプルキンエ細胞に達して,そのまわりに線維籠Faserkorbの形をなす終末分枝を発達させる(図472).

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最終更新日13/02/03

 

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