Rauber Kopsch Band2. 408   

グリア細胞の1つの特別な形としては放線方向に灰白層を貫いているものであって,束毛細胞Büschelzellenとよばれ,その細胞体は小さくて,プルキンエ細胞の層にあり,それがもつ2~6本の放線方向の枝は束をなして細胞体から柔膜まで達し,グリア小足をもって浅境界膜(図473, 474)において終る.この膜と小脳皮質の外面とのあいだには脳の実質が縮むと広くなる狭い腔所があって,これは放線方向にのびるグリア線維によって貫かれている.これが小脳上リンパ腔epicerebellarer Lymphraumであって,その中にはリンパ球もみられることがある(図474).

c)小脳核

 小脳核のうち歯状核Nucleus dentatusは結合腕の背方の延長部をなしていて,嚢状を呈し,多数のひだをもつ灰自質の板で,この板の厚さは0.3~0.5mmである.内側腹方に口を開いたその嚢全体は長さ15~20mm,幅8~10mm,高さ10~12mmである(図413).その微細構造はオリーブ核の構造とはなはだよく一致し,その外形もやはりよく似たものである.すなわちその灰白板の内部にいくつかの層をなして黄色い色素をもった大きさ30~36µの数多くの多極細胞があり,これらの細胞のあいだを多数の神経線維が通っている.歯状核の内部は有髄神経線維で満たされ,これらの線維群が歯状核の髄質核Markkernをなしている.この核の下壁は第四脳室蓋から0.1mm離れている.歯状核をとり囲んでいる髄質の被膜は,よく発達した有髄神経線維のフェルトFilzのようであって羊皮Vliesと呼ばれる.

 羊皮は主としてオリーブ小脳路の線維よりなり,この線維は歯状核のそばを通って小脳皮質に達するのである.プルキンエ細胞の神経突起は歯状核に終る.

[図473]小脳皮質の灰色層のグリア細胞

7ヵ月のヒト胎児の小脳回転の皮質を垂直断してある(Retzius).右側にプルキンエ細胞の断片がみえる.

[図474]小脳皮質の灰色層の周辺部 浅境界膜(5)が持ちあげられている. 1 柔膜;2 灰色層の外側の境界;3 小脳上リンパ腔;4 灰色層のグリア細胞の突起.4の上方にリソパ球が1つある;5 グリア足のある浅境界膜.

 栓状核Nucleus emboIiformis, pfropfkerhの微細構造は歯状核めそれと同じであるが,球状核Nuclei globiformes, Kugelkerneは室頂核Nucleus fastigii, Dachkernにむしろよく似ている.室頂核は色素を含む多極神経細胞をもち,この細胞の大きさは直径60µにまで達する.栓状核と歯状核との関係は副オリーブ核とオリーブ核との関係に似ている.

 室頂核には虫部の皮質からの線維が達している.この核から出てゆく線維は結合腕のなかをすすんで赤核に達し,さらに索状体の内側部をへて網様体に,また鈎状束Fasciculus uncinatus, Hakenbündelを通って前庭神経外側核(Deiters)に達する(図510).

S.408   

最終更新日13/02/03

 

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