Rauber Kopsch Band2. 412   

層形成は大脳皮質の個々の場所でことなるが,6層をなす基本型sechsschichtiger Grundtypus(Brodmann)に帰着させることができる.

 まずこの基本型について観察してみよう.柔膜のすぐ下にある外方の層は神経細胞に乏しくてグリアが豊富にある.この層はI. 表在層Lamina zonalis, Molekularschichtと呼ばれ,そこには外切線線維がある.これに続く小さい錐体細胞の集まっている層はII. 外顆粒層Lamina granularis externa, äußere Körnerschichtである.つぎに中等大の錐体細胞の層があってIII. 外錐体層Lamina pyramidalis(externa), pyramidenschichtと呼ばれる.ジェンナリ条Gennarischer StreifenのあるところはIV. 内顆粒層Lamina granularis interna, innere Körnerschichtと呼ばれる小さい錐体細胞の集まった1層であり,これに次いで髄放線の範囲にはV. 内錐体層(神経細胞層)Lamina pyramidalis interna(Lamina ganglionaris), Schicht der tiefen großen PyramidenzellenとVI. 多形細胞層Lamina multiformis, Schicht der polymorphen Zellenがある.

 大脳皮質で最も特徴のある細胞成分は錐体細胞Poyramidenzellenである.その大きさはさまざまである.最も小さいものは底め直径7µ, 最も大きいもの(中心前回の巨大錐体細胞)は底の直径が40ないし80µに達する.錐体細胞は3ないしそれ以上の側面と,髄質に向う1つの底ならびに長くのび出た尖端(尖端突起あるいは主突起Spitzen-oder Hampt-fortsatzと呼ばれる)をもち,これは脳の表面に向かって走っている.尖端突起は側方に細い枝をだし,幅が狭くなり,その終りは細い枝に分れる.底の角からは同じように枝分れする3~5本の突起,すなわち側方への底突起seitliche Basalfortsätzeが出る.これに反しで底の中央からは,1本の神経突起,すなわち中央の底突起mittlerer Basalfortsätzeが出る.これは放射方向にすすんで髄質稜に達する神経線維の軸索となるが,その他の突起は樹状突起である.神経突起は多数の側枝を出しつ刈髄質に向かって走る.多くの神経突起は髄質の近くでそれぞれ1本の水平方向の枝と下行性の下枝とに分れる.錐体細胞の核は楕円に近い形であり,はっきりした1個の核小体を有っている.その細胞体は,特に比較的大きな細胞では黄色を帯びた色素を有っている.

 外切線線維層には多くは切線方向に走る多数の神経線維と,カハール細胞Cajalsche Zellenという特別な種類の細胞とがある.この細胞の形は不規則で,多趣細胞であり,その長い突起が切線線維の方向に走っている(図478, 2).この細胞は2本以上の神経突起を出している.またこの層にはそれより奥にある諸層の小さい錐体細胞の突起がきている.第3に多くは有髄性の太い神経線維(図478, 6)が髄質層からやってきて途中で枝を分ちながら,切線線維層そのものの中でもなお分枝をなしている.この線維は遠くにある細胞から起るもので,遠方線維Fern-Fasernと呼ばれる.第4に,内方の主層に属する錐体細胞の突起が皮質の最表層のところで密な終末分枝をして広がっているのが第1層の中にある.

 これに続く多形細胞層には三角形および短い錐体の形をした多数の細胞があり,これらの細胞は突起の数が少いが,突起の性質は上に述べたものとよく似ている.この同じ層の中にはさらに多数の軸分枝細胞(図478,8)があり,この細胞は他のすべての層のなかにも存在するのである.

 放線上網工,放線間網工およびジェンナリ条を一定の細胞と関係づけるならば,放線上網工に含まれる有髄線維は遠くの細胞に由来しているようである.その遠さ加減はいろいろでありうる.ジェンナリ条は大部分が錐体細胞の神経突起の側枝からできているようである.放線間網工についても同じことが云えるが,そこでは軸分枝細胞の神経突起の枝の混在ということが一役を演じている.

 大脳皮質のグリア(第I巻, 図134136)としては第I巻,7376頁に記したグリア細胞のあらゆる形のものが存在する.しかしその細胞の位置と数については灰白質と白質とのあいだで違いがある.灰白質のなか(および線条体のなか)では,長突起細胞はほとんど全く欠如し,たず表在層のなかと白質にすぐ接する皮質の深層にだけこの細胞が少数に散在している.短突起細胞はかなりの量に存左する.稀突起グリアOligodendrogliazellenとオルテガ細胞Hortegazellenとは主として神経細胞と血管の近くにある.

 白質のなかでは長突起細胞が数において優つており,短突起細胞はただまれにみられる.稀突起グリアは白質にたくさん存左し,しばしば血管に沿って列をなしてならんでいる.オルテガ細胞は灰白質におけるよりも数が少なく,しかも全く不規則な配列をしている.

2. 大脳皮質の構造の場所による相違

 大脳皮質の解剖学的構造は細胞の層形成,すなわち細胞構築Cortoarchitektonikをみても,また神経線維の分布すなわち髄構築Myeloarhitektonikをみても個々の領域で同じではない.各領域のあいだで多かれ少なかれ違いが存在する.重要な相違はすでに早くから中心傍小葉,鳥距溝の周囲,透明中隔,海馬傍回,海馬足,歯状回,嗅葉,また一部が嗅葉に属している嗅野,島の皮質などにおいて知られていたのである.

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最終更新日13/02/03

 

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