Rauber Kopsch Band2. 429   

 嗅覚中枢Geruchszentrumへの求皮質性伝導路は嗅糸が初まりであって,これは嗅球の嗅糸球(図486)のなかでニューロンを換えたのちに,外側嗅条を通って海馬傍回鉤に達し,また内側嗅条をへて嗅傍野にいたり,そこから梁下回,外側縦条,歯状回を越えて同じく海馬傍回鉤に達する.

 味覚中枢Geschmackszentrumへの求皮質性伝導路は中間神経(鼓索のつづきをなす)と舌咽神経ならびに両者の線維で孤束のなかを下行して孤束核(=Nucleus, terminalis n. intermedii et n. IX)に達するものからはじまり,そこから線維が内側毛帯を通って視床に達し,次いで海馬傍回にきている.

 遠皮質性伝導路は脳弓のなかを乳頭体へと走る(皮質乳頭体路Tractus corticomamillaris).そこからさらに乳頭視床束を通って視床前核へ,また乳頭被蓋束を通って被蓋網様核に達し,そのほかさらに上丘にも達している.視床前核からはさらに伝導路が視床内側核と淡蒼球とを越えて赤核・黒核・上丘にいたり,内側縦束の起始核に達する.被蓋網様核からは伝導路がさらに網様体延髄路Tractus reticulobulbarisと網様体脊髄路Tractus reticulospinalisのなかをすすみ,上丘からおこる伝導路は視蓋脊髄路のなかを走って運動性の根細胞に達する(図505).

 嗅覚中枢と前交連との関係については369頁を,また扁桃核との関係については365頁を参照せよ.

5. 大脳皮質のいわゆる連合中枢sogenannte kortikale Assoziationszentren

 上に述べた皮質の諸領域を合せても大脳の表面全体のおよそ1/3を占めるのみで,残りの2/3は皮質の連合中枢である.局所解剖学的にはこの連合中枢を次のように分けることができる:1. 前頭領frontales Feld, 2. 頭頂後頭側頭領Parietooccipitotemψorales Feld, 3. 島領insulares Feldである. P. Flechsigはこれらの部分を前皮質連合領,中皮質連合領,後皮質連合領と呼んで区別している.

 後連合中枢hinteres Assoziationszentrum.これは頭頂葉の諸回転,楔前部,外側および内側後頭側頭回の一部,後頭葉の諸回転の前方部あるいは外側部ならびに中側頭回と下側頭回とをふくむ.前連合中枢vorderes Assoziationszentrumは前頭葉の前方部にある.中連合中枢mittleres Assoziationszentrumは3者のうちで最も小さく,島の諸回転である.

 P. Flechsigによるとこれらの連合中枢が上に述べた諸領域とちがうのは次の点である:すなわちこれらの部分は放線冠線維を受けることなく,そのために末梢の器官と結合せず,従って外界とも直接には結合されていないのである.そして連合線維Assoziationsfasernによって知覚をつかさどる部分や感覚性運動性の部分と結合しているというのである.ところが今日までの経験によると,これらの連合中枢は皮質下の諸構造からそれほど完全に離れているものでないことがわかった.これに属するかなり多くの領域が皮質下の部分と結合を有することがはっきりと証明されたのである.たとえば角回がそれである.角回の皮質はたしかに投射線維をもっているのである.

 一方では,その他の皮質領域にも連合神経路が欠けていない.ただこの連合神経路はFlechsigの連合中枢ではとりわけよく発達しているのであって,それゆえこれらを特別に取りあつかうことの必要がある.

 連合神経路のはたらきは大脳皮質の知覚性領域と運動性領域との機能的な連絡にあり,運動性領域に流れこんでくる興奮にある程度の変形を加えるのである.後方の連合中枢が視覚領,聴覚領および嗅覚領に対する関係がそれであり,一方では前方の連合中枢が前後の中心回およびその付近にある身体の知覚運動領域に対する関係がやはり同じである.

 後方の連合領域は外界に源を発する興奮に変化をあたえ,前方の連合領域はわれわれの体のなかで生じ,皮膚・筋・粘膜および内臓からおこる感覚に影響をあたえる.それゆえ人間がその前方の連合領域を病気でおかされるとその人格の根底が揺がされることになる.他方,後方の連合領域の障害によっては空間上の位置の認識が混乱しまたは不能どなり,人や物体をとりちがえたり,さらに言語盲Wortblindheitとか言語聾Wortteubheitのようなはなはだ特徴のある言語障害を生ずるのである.またそのためこの両方の領域はたがいに直接の交渉をもっている.その交渉は両者のあいだに存左する体知覚中枢に仲介されておこつたり,また半卵円中心のなかに含まれている連合神経路による直接の交渉であったりする.この直接の連合神経路がおそらくは意識的な運動を行なうときに大きな役わりを演じているのであろう.

 第3の連合中枢は明かに言葉の表象Verbalsymboleの連合をつかさどり,つまりもっぱら言語中枢として作用するのである.この中枢が病気でやられると言語機能の障害がおこる(すなわち失語症Aphasieである).

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最終更新日13/02/03

 

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