Rauber Kopsch Band2. 446   

 この系統のそれより先の経路は不明であって,ただその経過はこれを刺激するときに現われる吸気効果によって生理学的にだけ追跡できるのである.

 おそらくその線維は延髄のなかで,呼吸中枢“Respirationskern”(おそらくそれは灰白網様体の全体であろう)に達し,次いで下行して頚髄に達し,ここでは側索の腹方部で前柱の近くにあり,けっきょく部分的に交叉したのちに第4(および第5)頚髄の横隔神経の核に入る.この核に相当する前柱細胞の軸索が脊髄神経の前根を通り横隔神経となって横隔膜に達する.

 錐体路線維の他の一部は上前頭回の後部からでて(図508c),ほかの錐体路線維束とともに下方に走り,一部は交叉し,一部は交叉することなく延髄の下部において疑核の下部に達し,また頚髄のなかを走って前柱(第5, 第6,第7頚髄まで)の背外側にある特別な細胞群に達する.この前柱細胞が副神経核Nucleus originis n. accessoriiである.大脳皮質からきてこの核に達する線維は副神経系Accessoriussystemと名づけることができる.その続きをなすものは副神経の根であり,この核から発して背方に走り,次いで側索を通り,ちよつと垂直に上行する方向をとってから側方に向きを変えて,けっきょく副神経に入り,僧帽筋と胸鎖乳突筋とに達して,これらを支配する.

 中心前回の下部の領域において顔面神経系Facialis-System(図507, 508)が始まる.これは放線冠の内部を下方に走り,膝に近く内包の後脚の中を通り,大脳脚では錐体路のすぐそばにある.顔面神経系の線維は錐体路に伴って橋底部のなかを走り,次いでその大部分が橋の下部において交叉し,けっきょく顔面神経核に達するが,そのさい注意すべきことは,前頭部と眼瞼の筋を支配するこの核の部分は交叉性のもののほかに同側性の線維をも受けることである.顔面神経核の細胞から起る神経突起は背内側の方向に走り,外転神経核の上方で顔面神経の内膝を形成し,次いで顔面神経根となって外に出る(図463, 464, 493).

 顔面神経系より下方で中心前回の下部の細胞からは下行性の三叉神経系Trigeminus-System(図507, 508)が起る.これは顔面神経系と同じように放線冠をなしてすすみ内包・大脳脚・橋を通る.下丘の下部の高さで三叉神経系の線維は錐体路から次第に背方に離れてゆき,縫線で部分的に交叉して三叉神経起始核に達する.この核の細胞から出る神経突起が三叉神経の運動性の根である.

 下行性の三叉神経系としてはまたいわゆる三叉神経の副核accessorischer Trigeminuskern tre達する線維束がある.この副核は四丘体の範囲と橋の上部で中心灰白質の外縁に存在する円みを帯びた神経細胞の集りで,これが青斑の細胞と直接につずいている.この線維系統の中心経路は決定的に証明されてはいないが,きつと次のようになっているのであろう.すなわちこれに属する線維は大脳皮質から出て放線冠のなかを下方に走り,内包を通りぬけたのちに被蓋に達し,中心灰白質のすぐ外側にある特別な線維束をなし,この束は横断面では三日月の形をして上に述べた核にまで続いている.この線維系の末梢ニューロンは三叉神経中脳路により形成されるが,別の意見によればこの中脳路は三叉神経の知覚性部分の上行性の根であるという.

 いま1つ重要なのが眼に行く線維系Augen-Faser-systemであって,これは中前頭回の後部の細胞から起り,その神経突起は放線冠のなかを下行し,内包の内部ではその膝の近ぐにある.

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最終更新日13/02/03

 

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