Rauber Kopsch Band2. 450   

Bingは脳の下部中枢から出て下行するこれらの伝導路をFasciculi subcorticospinales(皮質下脊髄束)の名でまとめている.

 視床から出る下行性の伝導路:これに属するものとしてまず第一に挙げるものは皮質の中心運動領からでて放線冠のなかを下行して,視床の内側核に達する伝導路である.この内側核の細胞から起る線維は同側の赤核に達し(一部は反対側の赤核にも達する),赤核の大細胞性の部分からは新たに下行性の線維がでて,これは腹側被蓋交叉wentrale Haubenkreuzung(Forel)のなかで正中線を越え,さらに赤核脊髄路(モナコフ束)Tractus rubrospinalis(Monakowsches Bündel)となって延髄の外側面に沿って下方に走る.そこまでゆく途中でこの系統は線維の定まった部分を顔面神経核と三叉神経核とにあたえ,そして脊髄の側索に移行する.この線維からの側枝と終末枝とが運動性の前柱細胞に達する(図405).赤核の小細胞性の部分からでる別の線維群がオリーブ核に達する.これが赤核オリーブ路Tractus rubroolivarisであって,さらにオリー一ブ核から線維がでてオリーブ脊髄路Tractus olivospinalisとなりヘルウェク三稜路のなかを進み,頚髄にまで達する.この線維は運動性の前柱細胞に終る.同じく赤核の小細胞性の部分からでる別の線維が網様核Nuclei reticularesに達していて,これが赤核網様体路Tractus rubroreticularisである.その脊髄への続きは網様体脊髄路Tractus reticulospinalisである.

 視床を通って下行するいま1つの伝導路は同じく皮質の中心部にある運動領にはじまり,放線冠のなかを下行して,視床の内側核に達する.次いでこの核の細胞からはBechterewにより発見された線維束がでる.この線維束は反屈束の線維のそばでその内側を通り,内側縦束(後縦束)の外側に接しており,四丘体の領域では外側腹方への方向をとって進み,次第に正中線に近づいて,橋背蔀の網様核(図464)に達する.これが視床網様体路Tractus thalamoreticularisである.この核じしんは網様体脊髄路Tractus reticulospinalisを前索基礎束に送っており,ここから運動性の前柱細胞に達する(図405).

 皮質の中心部にある運動領からでて,放線冠のなかを下行する第3の視床線維群はやはり視床の内側核に達する.ここから1線維索が起こってまず(視床と四丘体とのあいだの高さで)内側縦束の内側腹方を走り,次いで反屈束の背方に位置を占める.赤核の高さでは背側被蓋交叉の腹方で,かつ動眼神経根の内側にある.橋の範囲では縫線の近くに泣置が変り,その腹方の線維束が内側毛帯の背内側縁に接するが,背方は内側縦束に達していない.さらにそれより先の経過においてひき続き縫線に沿っており,この線維束はその場所で延髄に近づくと減弱して,下中心核の領域で全く消失する.

 この伝導路の下方の部分はあまりよくしらべられていないが,その線維は延髄の灰白網様質の細胞(図458)と関係をもっていることはだいたいに疑いがないといえよう.新たにご,で始まる線維は,おそらくは網様体脊髄路Tractus reticulospinalisとなうて脊髄の前索基礎束のなかを下方に走り,運動性の前柱細胞に達する.

 視床(および淡蒼球)においてなお視床オリーブ路Tractus thalamoolivarisの線維の一部が起り,これは被蓋の中心部(図470)を走り,赤核からでる線維群(図509),すなわち赤核オリーブ路Tractus rubroolivarisを合せて,延髄に向かって次第に外側腹方にその位置が変り,次いでオリーブ核の外側に達し,この核に終る.この経路の続きをなすのはオリーブ脊髄路Tractus olivospinalisであって,これは前根のでる場所に相当して頚髄のなかを下行している.

 上丘を通る線維系については,まず中心前,後両回からでる線維群を述べる.これらは放線冠のなかを内包に向かってすすみ,ついで大脳脚の外方の領域にいたり,けっきょく上丘核に達する.

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最終更新日13/02/03

 

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