Rauber Kopsch Band2. 454   

 橋腕は小脳半球から出て橋に達する下行性の線維を一部に含んでいる.この線維は同側および反対側の橋核に終る.その続きをなすのは橋の正中部の線維群であって,これは橋背部に達して,そこを一部は下方に脊髄へと走り,一部は上方に走って四丘体に達する.

 結合腕からは若干の線維が内側縦束に達する.これらの線維は結合腕交叉の背方部からでている.

 最後になお述べなければならないのは,知覚性の神経の領域にある下行性の経路のことである.このような線維は嗅球,視神経,聴覚伝導路,脊髄神経の後根のなかに見られる.

 脳の皮質と脳脊髄の軸をなす灰白質とのあいだにある大きな諸経路のほかに,中枢神経系にはなお局部的な意味をもつ数多くの短い伝導路が広く存在している.

 連合神経路および交連神経路については365,  366頁を参照のこと.

III.脳神経Nervi capitales, Hirnnerven

 脳神経の起始Ursprungとそれが脳の表面において出てくる場所とはすでに372, 373頁および420425頁で述べた.それに連関してここでは脳硬膜で被われた頭蓋底における諸神経の通過場所をしらべて見よう.

脳神経が頭蓋底を通過する場所(図445, 511)

I. 嗅糸Fila olfagtoriaは嗅球からでて硬膜の鞘に包まれて節骨の籠板の多数の孔を通り,鼻腔の内側壁と外側壁とに達する.

II. 終神経N. terminalisは嗅i球の後方からでる.これは節板の孔の1つを通って頭蓋腔を去る.

 視神経Fasciculus opticus, Augenstiel (これは脳神経ではなくて,中枢神経内の1結合束である)は眼動脈を被いつつ視神経管を通って眼窩に達する.

III. 動眼神経N. oculomotoriusは鞍背突起の外側縁に向かって,脳硬膜の動眼神経孔Porus oculomotoriiに入る.この孔は脳硬膜のつくる外側錐体牀突ヒダPlica petroclinoidea lateralisの内側壁にあり,動眼神経はこの孔から上眼窩裂をへて眼窩に入る.

IV. 動眼神経孔のうしろ1cmのところで硬膜に狭い滑車神経孔Porus trochlearisがあり,外側錐体牀突ヒダがいくらかこの孔に被いかぶさった形をしている.滑車神経はこの孔を入って眼窩に達する.

V. 滑車神経孔の後方1cmのところに広い三叉神経孔Porus trigeminiがあって,これは半月神経節腔Cavum ganglii semilunarisに続いている.この孔を三叉神経の両根が通り,半月神経節腔のなかで半月神経節をなしている.三叉神経孔は内側錐体牀突ヒダの下方で小脳天幕の内側部の下にある(図445).半月神経節腔は硬膜とクモ膜によって作られた平たい嚢の内部にある腔所である(373頁参照).

VI. 外転神経N. abducens.三叉神経孔の内側かつ後方5mmのところで斜台の範囲に小さい外転神経孔Porus abducentisがあり,これは側頭骨錐体尖の内側で前3者よりもいっそう正中面に近く存在する.

VII. およびVIII. 顔面神経N. facialisと内耳神経N. statoacusticusとはクモ膜といっしょになって硬膜に被われた内耳孔と内耳道に入る.

IX., X. およびXI. 舌咽神経N. glossopharyngicus,迷走神経N. vagusおよび副神経N. accessoriusは頚静脈孔の前方部,すなわち神経部Nerven-Abteilungに達する.そこでは舌咽神経が1つの特別な硬膜鞘をもち,迷走神経と副神経とは共通の硬膜鞘をもっている.

XII. 舌下神経N. hypoglossusは通常かなり大きな2つの束に分れて舌下神経孔Porus hypoglossiに入り,それに応じて舌下神経孔はしばしば重複している.これは後頭骨の舌下神経管の内口に当たっている.

I.嗅糸Fila olfactoria(図516)

嗅球からでる色の淡い嗅糸は,その数がおよそ20本あって,共通の1幹に合することなく分れたまま内側外側の各1列をなして,おのおのが脳膜の鞘状突起に包まれ,個々に篩板の孔を通って嗅粘膜に達する.

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最終更新日13/02/03

 

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