Rauber Kopsch Band2. 458   

その交感根sympathische Wurzelに眼球に血管神経を導いており,これは特に脈絡膜と虹彩の中に広がるのである.なおこの根には刺激によって瞳孔散大を起す線維が含まれる.短根は毛様体神経節に副交感神経線維をもたらし,この線維が瞳孔括約筋と毛様体筋とを支配している.長根は知覚性の線維を含む.なおそのほかに交感性の運動線維は最終の起始を脳脊髄神経系のなか,それも最下部の頚髄と第1胸髄の中にもっている.この高さの交通枝Rami communicantesが問題の線維を頚部の交感神経にみちびき,後者から頚動脈神経叢とそれから出る枝をへてここに来る.

IV.滑車神経N. trochlearis(図511, 512)

 滑車神経は硬膜の滑車神経孔に達したのちに,三叉神経の第1枝に沿って硬膜のつくる小さい管の中を通って上眼窩裂に達する.眼窩では上眼瞼挙筋の起始の上を越えて上斜筋に向い,この筋に分布する.

 滑車神経は脳神経のなかで最も細いものである.これは(Swensson 1949によれば)成人では,脳から出るところでは2480本の神経線維をもち,筋に入るところでは2630本の神経線維をもっている.以前に学者が記載した交感神経および三叉神経とこの神経との吻合は存在しない.滑車神経に含まれる知覚性の線維は三叉神経中脳核からおこるという.

V.三叉神経N. trigeminus(図511519)

 三叉神経は50本の束からなる太い方の知覚性根すなわち大部Portio majorと,細い方の運動性根すなわち小部Portio minorとをもって橋を去る(図417).ついで硬膜の三叉神経孔に入って半月神経節腔に達する.この腔所のなかでその知覚性根がふくらんで脊髄神経節に相当する1つの強大な半月神経節Ganglion semilunare(Gasseri)となる.運動性根はその内側面にあり,それはちょうど脊髄神経における運動性根と知覚性根の関係と同じである(図417).

 半月神経節は,Fernerによれば,長さ17~20 mm,幅5mm,厚さ3mmであり,側頭骨錐体の大脳面の上で三叉神経圧痕のなかにある.この神経節の凹縁は後方,知覚性根の方に向かい,凸縁は前方に向いている.この凸縁からは3本の大きな枝が出る:すなわち眼神経Nervus ophthalmicus,上顎神経Nervus maxillaris,下顎神経Nervus mandibularisである.この下顎神経に運動性根の全部が移行する.下顎神経はそのほかに多くの知覚性の線維をも有し,3つめ枝のうちで最も太いものである.

I. 眼神経N. ophthalmicus(図512514, 516, 517, 519)

 眼にゆく三叉神経の枝であって,3枝のうちで最も細く,海綿静脈洞と外転神経との外側を通って上眼窩裂に達する.ここでは眼神経の上に滑車神経がある.

 この神経は海綿静脈洞のなかを通るあいだに内頚動脈神経叢から若モの細い線維束を受け,動眼神経・滑車神経・外転神経にそれぞれ1本の細い枝を送り,かくしてこれら3つの神経に知覚性の線維をあたえている.眼神経はまだ頭蓋腔内にあるあいだに細い硬膜枝Ramus meningicusを送りだす.これは後方に向い,直ちに滑車神経に接してすすみ,小脳天幕のなかで長くのびた細い枝となって広がり,上錐体静脈洞,横静脈洞および直静脈洞の壁に分布する.

 上眼窩裂に入る前に,眼神経はその3終枝に分れる:

それは

1. 涙腺神経N. lacrimalis(図512, 514).この神経は眼窩の上外側縁に沿い,外側直筋の上を越えて涙腺の眼窩部に達し,涙腺のうしろで各1本の上枝と下枝とに分れる.その上枝は涙腺に細い枝をあたえ,さらにこれを貫いてすすみ,次いで粘膜,外眼角の皮膚ならびに上眼瞼のなかで枝分れする.

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最終更新日13/02/03

 

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