Rauber Kopsch Band2. 460   

II. 上顎神経N. maxillaris(図514517, 519)

 三叉神経の第2枝であって,正円管を通って翼口蓋窩に達し,ここから下眼窩裂を通って眼窩の底にいたり,上顎骨の眼窩下管に入る.

 まだ頭蓋腔の内部にあるときに1本あるいは2本の硬膜枝Ramus meningicusという細い枝を硬膜に送りだし,この枝は中硬膜動脈の前枝の分布領域に広がり,三叉神経第3枝のだす硬膜枝と結合している.

 三叉神経第2枝(上顎神経)が頭蓋腔のそとにおいて出す枝äußere Ästeは次の3つ:すなわち頬骨神経N. zygomaticus,眼窩下神経N. infraorbitalis,翼口蓋神経Nn. pterygopalatiniである.

1. 頬骨神経N. zygomaticus(図514, 517)は翼口蓋窩のなかで幹から発し,下眼窩裂を通って眼窩に入る.そこで1枝(頬骨神経との交通枝)によって涙腺神経と結合する.それからこの神経は眼窩の外側壁で頬骨眼窩孔に入り,そこで次の2枝に分れる.:a)頬骨側頭神経N. zygomaticotemporalis,これは頬骨側頭孔からでて側頭窩に入り,側頭筋と側頭筋膜とを貫いて側頭の前方部の皮膚に分布する(図517),b)頗骨顔面神経N. zygomaticofacialisは1本あるいは2本の枝となり頬骨顔面孔を通って頬骨の外面に達し,眼輪筋を貫いて頬部の皮膚に分布する.そのさい顔面神経の末梢枝と結合する(図517).

2. 眼窩下神経N. infraorbitalis(図514, 515, 517, 521, 522).この神経は上顎神経の幹の続きをなし,下眼窩裂を通って眼窩の底に達し,眼窩下溝ならびに眼窩下管に入る.その先きは眼窩下孔を通って上顎骨の前面に達する.その枝は次のものである:

a)後上歯槽枝Rami alveolares maxillares posteriores(図514, 515).これは通常2本あって,眼窩下神経が眼窩に入る前にすでに幹から分かれて,同名動脈に伴って上顎結節のところを下行する.後方の1枝はその線維の一部が上顎骨の外面Außenzvandにとどまって,大臼歯の範囲の歯肉と頬粘膜のこれに隣接する部分とに分布する.そのほかの諸枝は歯槽孔を通って上顎洞の後外側壁に達する.ここでは骨壁にある不完全な管のなかを前方に走り,中上歯槽枝と神経叢の状態をなして結合し,その細い枝を上顎洞の粘膜にだし,また上歯枝Rami dentales maxillaresを3本の大臼歯に送っている.

b)中上歯槽枝Ramus alveolaris maxillaris medius(図515).この枝は眼窩下溝のなかで眼窩下神経から分れ,はじめは特別な1つの小管のなかを走り,次いで上顎洞の外側壁の1つの溝のなかを下行し,後方は後上歯槽枝と,前方は前上歯槽枝と結合する枝をだし,その先きは細い枝に分れて2本の小臼歯とそれに属する歯肉の部分とに終る.

c)前上歯槽枝Ramus alveolaris maxillaris anterior(図515).これは眼窩下孔の近くで眼窩下神経から分れ,上顎洞の前壁にある特別な1つの小管を通って歯槽縁にすすむ.ここで前上歯槽枝は1本の鼻枝Ramus nasalisを鼻腔へだしており,その残りが歯枝Rami dentalesであって,これは上顎の犬歯と切歯とにゆく.

 鼻枝Ramus nasalisは特別な1つの小管を通って鼻腔底の前方部の粘膜に達する.鼻枝は鼻口蓋神経N. nasopalatinusと吻合している(461頁).

 歯枝Rami dentalesはたがいに結合して上歯神経叢Plexus dentalis mqxillarisをなし,この神経叢は凸側を下方に向けている.上歯神経叢からは上顎の歯槽と歯への神経がでている.これが上歯枝Rami dentales maxillaresと上歯肉枝Rami gingivales maxillaresである(図515).

d)眼窩下管から出たのちに眼窩下神経はその終枝に分れ,これらの枝が顔面神経と結合する.その枝としては次のものがある:

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最終更新日13/02/03

 

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