Rauber Kopsch Band2. 465   

これは外側翼突筋の上を越え,あるいはこれを貫いて側頭筋の前部に向かっている.d)外側翼突筋神経N. pterygoideus lateralis.これは多くのばあい頬神経の中を走って,外側翼突筋を貫くときにこの神経から分れる.e)頬神経N. buccalis(図517)は外側かつ前方に向い,外側翼突筋を貫き,あるいはこの筋の下から現われて頬筋の外面を口角にまで達し,そのあいだに終枝に分れる.その終枝のうち若干のものは頬筋を貫いて,頬部の粘膜にいたり,別の枝は頬部の皮膚に達して顔面神経の枝と結合する.f)内側翼突筋神経N. pterygoideus medialis(図516, 518).これは下顎神経の内側面から発して,耳神経節を貫き,あるいはこれに接してすすみ,次いで内側翼突筋に入る.耳神経節の近くでこの神経は口蓋帆張筋神経Nmusculi tensoris veli palatiniと鼓膜張筋神経N. musculi tensoris tympaniをだしている.

2. 耳介側頭神経N. auriculotemporalis. 図517519, 521, 522

 これは下顎神経の幹の後縁から通常2根をもっておこり,この2根のあいだに中硬膜動脈をはさんでいる(図518).次いで下顎骨の関節突起のうしろで弓なりに曲がって外側上方に向い,耳下腺の下に進み浅側頭動脈のうしろに達し,その終枝は耳と側頭部の皮膚に放散する.この神経は経過の途中で2つの結合をなしている:すなわち a)耳神経節から枝(図518) (耳神経節交通枝Rami communicantes ganglii otici)を受ける.この枝によって舌咽神経から小浅錐体神経の仲だちによって耳下腺への分泌線維が耳介側頭神経に導かれる.b)耳介側頭神経は顔面神経N. facialisと結合する.これには多くのばあい顔面神経との交通枝Rami communicantes cum n. faciali(図517)とよばれる2枝があり,これらの枝は耳介側頭神経が上方に曲るところで顔面神経の上部の枝と合して,これに知覚性の線維をあたえる(図522).

 耳介側頭神経の枝としては次のものがある:1~2本の顎関節への小枝.耳下腺枝Rami parotidici,これはその数が個体によってちがい耳下腺の実質にゆくものである.外耳道神経Nn. meatus acustici externiはふつう2本あり,それは上下各1本であって外耳道の骨性部と軟骨性部との境から後者の壁に入っている.その下枝は外耳道の下壁に,上枝は上壁にいたり,いずれも外耳道の皮膚を支配するのにあずかっている.上枝から鼓膜枝R. membranae tympaniという細い枝がでて鼓膜に達する.つぎに前耳介神経Nn. auriculares temporales(図517).これは浅側頭動脈のうしろを通って耳介の凹面の皮膚に分布する.また浅側頭枝Rr. temporales superficiales(図517)は耳介側頭神経の終枝であって,頬骨弓の上を越えたのちに耳の前方と上方の側頭部の皮膚に広がっている.その枝分れの最終のところが前頭神経・顔面神経・後頭神経の諸枝と吻合している.

3. 下歯槽神経N. alveolaris mandibularis.(図517, 518, 522)

 この神経は下顎神経の数多くの枝のうちで最も太くて,外側翼突筋と内側翼突筋とのあいだを下方にすすみ,そのさい舌神経の後外側にあり,下顎と蝶骨下顎靱帯とのあいだをへて下顎孔に達する(図517).そして下歯槽動脈といっしょに下顎管のなかを走り,大臼歯と小臼歯とに分布し,その残りをなす下歯槽神経の線維の大きい方の集りはオトガイ神経N. mentalisとなってオトガイ孔を通って外にでる(図517,  522).残りの細い方の集りは下顎管の中をさらにすすんでそのがわの下顎の犬歯と切歯とに分布する.下顎孔に入る前にこの神経は顎舌骨筋神経Nmylohyoideus曾(図517, 518, 534)をだす.この枝はまず内側翼突筋に被われて顎舌骨神経溝のなかをすすみ,次いで顎舌骨筋の下面に接して前方に走り,顎舌骨筋と顎二腹筋の前腹とに分布する.この神経は多くのばあいオトガイ部のすぐうしろで若干の細い枝をオトガイ部とオトガイ下部の皮膚に送っている.

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最終更新日13/02/03

 

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