Rauber Kopsch Band2. 470   

 局所解剖:外転神経はまず斜台の上に平たく乗り,次いで鞍背のうしろ外側で硬膜のつくる外転神経孔を通って海綿静脈洞に入る.この静脈洞の中では1つの硬膜鞘に包まれて内頚動脈の外側面にあり,次いでこの静脈洞を去って上眼窩裂に達し,動眼神経の下を通って眼窩に入る.この神経は外側直筋の両頭のあいだを通りぬけたのちにこの筋の内面からはいってゆく.

VII.顔面神経N. facialis(図511, 514518, 520523)

 顔面神経は顔面神経核より発して,橋腕の下縁で表面に現われる.顔面神経の出るところと内耳神経のそれとのあいだで中間神経N. intermedius(図417)が現われ,これは顔面神経に加わるのである.

 顔面神経,中間神経および内耳神経は脳からでたのちに外側前方に向い,脳膜の続きに包まれて内耳道に入る(図511,  523).そのさい顔面神経は中間神経といっしょに内耳神経の前内側面にある1つの溝のなかにある.内耳道の底で顔面神経は顔面神経管に入り,そこを通つつてまず前外側の方向に走り顔面神経管裂孔にまで達し,ここで顔面神経膝Geniculum n. facialisを成してほとんど直角に曲り,こんどは外側後方に走る.ここでは外側半規管突隆と前庭窓とのあいだにある(図515).次いで弓を画いて下方に曲り,中耳の後壁のうしろ1~2mmの所を下行して,茎乳突孔を通って頭蓋の外にでる.それから直ちに耳下腺の内部に入り,外耳道の下部で顎二腹筋の後腹と外頚動脈の外側を走る.耳下腺の内部で2本の主な枝に分れ,この2本がさらに枝分れしたり結合したりする.かくして耳下腺神経叢Plexus parotidicusが生ずる(図522).次いでその終枝が耳下腺の前縁から扇形に広がって顔面の諸筋に分布する.

 顔面神経膝には膝神経節Ganglion geniculi(図520)があり,脊髄神経節と後根の関係のごとく中間神経がそれと同じようにこの神経節に入る(図523).

 味覚線維を導く中間神経を除いて考えると,顔面神経は運動性の神経であり,頭蓋冠・外耳・顔面(咀嚼筋は除く)のすべての筋・頬筋・アブミ骨筋・茎突舌骨筋・顎二腹筋の後腹に分布するものである.その運動性の線維のうちで特別なものは,この中に含まれる唾液腺(耳下腺を除く)への分泌線維であって,これは三叉神経の仲だちによって(三叉神経の項参照),その目的地唾液腺に達する.すでに顔面神経管を通っているときに顔面神経には知覚性の線維が加わる.それは三叉神経から出て大浅錐体神経を通ってくるのである.それよりはるかに多く知覚線維の混入が顔面における終枝のところで起る.

a)顔面神経は内耳孔Porus acusticus internusに入ってから茎乳突孔から出るまでに次に述べる枝や結合をもっている:

1. 大浅錐体神経N. petrosus superficialis major(図514, 515, 520).これは膝神経節からでて翼口蓋神経節に達する. 461頁および下記を参照せよ.

2. 鼓室神経叢との交通枝Ramus communicans cum plexu tympanico.これは膝神経節あるいは大浅錐体神経の初部からでて鼓室神経叢にゆく(図515).

3. アブミ骨筋神経N. stapedius.これは顔面神経の下行部から発してアブミ骨筋を支配する.

4. 鼓索神経Chorda tympani(図518, 520).これは顔面神経管の下部で背方に向かって開いた鋭い角をなして顔面神経の幹から分れて,鼓索神経小管を通って鼓室に入り,その粘膜に包まれてキヌタ骨の長脚とツチ骨柄との間を通って錐体鼓室裂に達し,ここを通って頭蓋底の外にでて前下方に走り鋭角をなして舌神経と合する.

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最終更新日13/02/03

 

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