Rauber Kopsch Band2. 475   

 頚静脈孔のなかではその知覚性の束が内神経節Ganglion intracranialeという個体的に大きさの異なる1つの神経節をもっている.また頚静脈孔のすぐ下で舌咽神経はふくれていっそう大きな外神経節Ganglion extracranialeをなす.この神経節は錐体小窩Fossula petrosaのなかにある.これらの両神経節がもつ細胞は脊髄神経節のもののように偽単極の形をしている.

 舌咽神経は外神経節から先きはまず内頚静脈と内頚動脈とのあいだを通り,次いで内頚動脈と茎突咽頭筋とのあいだを下方に走り,この筋の後縁を廻って向きを変えて,その外側面に達し(図520),後下方に凸の弓を画いて茎突咽頭筋と茎突舌筋とのあいだをへて舌根に達する.

 舌咽神経は運動性および単純知覚性の線維のほかに特に味覚線維Geschmacksfasernを含んでいる.舌咽神経は味覚を伝える神経として最も主要なものである.

a)外神経節Ganglion extracranialeからは次の枝が出る:

1. 鼓室神経N. tympanicus(図515).これは鼓室小管を通って鼓室に入り,ここでは鼓室溝の中を通り,小浅錐体神経小管をへて側頭骨錐体の上面に達して,そこでは小浅錐体神経と呼ばれる.この神経は上に(468頁)述べたように耳神経節に入る.かくしてヤコブソン吻合Jacobsonsche Anastomoseが生ずる.この吻合は外神経節と耳神経節とを結合するものである.この吻合が途中で顔面神経と交感神経とからの枝と結合することによって鼓室神経叢Plexus tympanicusができている(図515).

 顔面神経の結合枝である鼓室神経簸との交通枝Ramus communicans cum plexu tympanicoは顔面神経膝のあたりで顔面神経からでるか, あるいは大浅錐体神経からでている.

 鼓室神経と交感神経との結合は多くは1本であるが,それよりまれには2本ある.この結合枝は頚鼓神経Nn. caroticotympaniciと呼ばれて内頚動脈神経叢から発し,頚鼓小管を通って鼓室に達し,鼓室神経に合する(図515).

 鼓室神経の末梢枝としては,α)鼓室小枝Ramuli tympanici,これは鼓室と乳突蜂巣との粘膜にいたる,β)耳管枝Ramus tubae pharyngotympanicae(図515),これは耳管の内側壁を前方に走り,耳管咽頭口にまで達する.

2. (迷走神経の)舌咽神経との交通枝 R. communicans(n. vagi)cum n. glossopharyngico.これは1~2本の細い枝で,迷走神経の頚静脈神経節のすぐ下方で外神経節と迷走神経とを結合している.さらに1本の細い枝があって,これは外神経節から迷走神経の耳介枝に達している.これが迷走神経の耳介枝との交通枝Ramus communicans cum ramo auriculari n. vagiである.

3. 交感神経との交通枝Ramus communicans cum n. sympathico.これは外神経節を交感神経の上頚神経節と結合させている.

4. (顔面神経の)舌咽神経との交通枝Ramus communicans(n. facialis)cum n. glossopharyngico.これは外神経節のすぐ下で舌咽神経の幹から出て,顔面神経の二腹筋枝からおこる1本の細い枝と下方に凸りわなをなして結合する.これによっておそらくは顔面神経の運動性の線維が舌咽神経に達し,これらの線維は後にふたたび舌咽神経から出てゆくのであろう.

b)舌咽神経の末梢枝としては次のものがある:

1. 咽頭枝Rami pharyngici(2~3本).この枝はいろいろな高さで舌咽神経の幹からでて,迷走神経と交感神経との咽頭枝と結合し,これらの枝とともに咽頭の側壁にある混合性の咽頭神経叢Plexus pharyngicusを作っている(図524; 477,  478頁参照)

2. 茎突咽頭筋枝Ramus stylopharyngicus.これは茎突咽頭筋およびその近くの粘膜にゆく.

3. 扁桃枝Rhmi tonsillares.これは扁桃と口蓋弓の粘膜に分布する.

4. 舌枝Rami linguales.これは舌のなかに広がる舌咽神経の終末枝である.

 舌の内部で粘膜下における舌枝の枝分れはたがいに数多くの結合をなし,多数の小さい神経節の介在することが著しい.咽頭神経叢にも数多くの小さい神経節がある.

S.475   

最終更新日13/02/03

 

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