Rauber Kopsch Band2. 480   

3. 反回神経N. recurrens.(図88, 224226, 524, 526, 527)

 反回神経が迷走神経から発する高さは(右側は)鎖骨下動脈の初めの部分の前方,(左側は)大動脈弓の終りの部分の前方である.そして右の反回神経は鎖骨下動脈を回ってわなを作り,左のそれは大動脈弓を回ってやはりわなをなす.次いで左の反回神経は気管と食道とのあいだの溝のなかを上行して喉頭に達し,右の反回神経は鎖骨下動脈を回ったところから斜めの方向に走って喉頭に達する(図88, 223226).反回神経の終りの部分を下喉頭神経N. laryngicus caudalisとよぶ.これは甲状軟骨の下角の後方で喉頭咽頭筋を貫通し,あるいはこの筋の下縁の下から喉頭の内部に入り,終枝に分れる.その長い経過のあいだに数多くの枝を出す:すなわち

α)若干の下心臓枝Rami cardiaci caudalesを心臓神経叢に;

β)結合枝を(交感神経幹の)下頚神経節Ganglion cervicale caudalbに;

γ)気管枝Rami trachealesと食道枝Rami oesophagici;これらの枝は若干の甲状腺にゆく小枝とともに(Braeucker)反回神経が気管と食道とのあいだの溝を通っているときにでるのである.

δ)下喉頭神経N. laryngicus caudalis.これは反回神経の終枝である.下喉頭神経は喉頭に達したのちに前枝Ramus ventralisと後枝Ramus dorsalisとに分れる.前者は外側輪状披裂筋・甲状披裂筋および声帯筋・甲状喉頭蓋筋および披裂喉頭蓋筋に分布する.後枝は上喉頭神経の交通枝を受け入れて,後輪状披裂筋ならびに披裂筋に分布する.若干の細い枝が声門裂より下方にある喉頭粘膜に達している.

 下喉頭神経はかくして喉頭筋の大部分を支配するものであり,上喉頭神経はただ1つの喉頭筋だけを支配している.交通枝は知覚性の線維を下喉頭神経に導いている.--しかしHoferによれば下喉頭神経は混合性の神経であって,これは声門裂より下方の粘膜におよそ第3または第4気管軟骨の高さまで分布し,なお声帯より上方の領域にも達しているという.

4. 心臓枝Rami cardiaci.

α)上心臓枝Rami cardiaci craniales(図524).これは2~3本あり,上下の喉頭神経のあいだにある迷走神経の頚部から発して,総頚動脈に沿って下行する.そして右側では腕頭動脈に沿ってすすんで深心臓神経叢に達し,左側では大動脈弓に接して存在する浅心臓神経叢に達する.これらの心臓枝のうちで最も上方にあるものが上に述べた抑制神経N. depressorである.また若干の細い小枝を甲状腺に送っている(Braeucker).

β)下心臓枝Rami cardiaci caudales(図524).これは一部は反回神経から,一部は迷走神経の幹から発する.これらの枝はたがいに結合し,また上心臓枝と,そのうえに交感神経の心臓にゆく諸枝とも結合して,深心臓神経叢に入る.若干の細い枝が気管神経叢Plexus trachealisおよび食道神経叢Plexus oesophagicusにもあたえられる.

c)迷走神経の胸部Brustteil des Vagusは反回神経の出るところから横隔膜の食道孔まで.

 迷走神経は胸腔内におけるその全経過のあいだに交感神経の枝を受ける(Braeucker 1927).これらの枝は脊髄神経の線維を迷走神経にもたらすものである(図570).

1. 下気管枝Rami tracheales caudales.これは反回神経より下方で迷走神経の幹から分れて,気管神経叢を作り,この神経叢はその近くにある神経叢と結合している.

2. 気管支枝Rami bronchales.前気管支枝Rami bronchales ventralesと後気管支枝Rami bronchales dorsalesとが区別され,前後の両枝のうちでは後のものの方がいっそうつよく発達している.これらの枝は肺に入る前に若干の細い小枝を肺胸膜に出している(Braeucker 1927).そして気管神経叢と結合しつつ前肺神経叢Plexus pulmonalis ventralis と後肺神経叢Plexus pulmonalis dorsalisとを作るのである(図524).

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最終更新日13/02/03

 

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