Rauber Kopsch Band2. 481   

 後肺神経叢の形成には交感神経の第1から第4までの胸神経節から出る枝が関与している.両側の後気管支枝は肺神経叢を形成するに当たって線維の交換Faseraustauschをする.同様に前と後の肺神経叢がたがいに結合して,気管支とともに肺の内部に入る.肺の神経には顕微鏡でやっと見える神経節,すなわちMikroganglien(微小神経節)がたくさんにある.

3. 食道枝Rami oesophagici. 右の迷走神経は食道の後面に接し,左の迷走神経は食道の前面に接する.そして前方と後方にでる枝によって両側の迷走神経がたがいに結合し,そのうえ一部は網状に分れている.かくして食道神経叢Plexus oesophagicusが生じ,これは食道の下半部の筋肉と粘膜とに分布し,さらに枝を大動脈神経叢と壁側胸膜の縦隔部とにあたえている(図570).

(4. 心膜枝Rami pericardiaci. )心膜の前壁には左右の迷走神経がそれぞれ1本の枝をあたえ,また後壁には迷走神経の幹と食道神経叢と後肺神経叢とから枝が達している.

d)迷走神経の腹部Bauchteil des Vagus,両側の迷走神経がその左のものは食道の前面に,右のものはその後面に接しつつ腹腔に入る.

 食道神経叢から生ずる2つの主な神経索は前方の細い方のものと後方の太い方のものとがあって,両者はBraeucker(1927)によればもはや左とか右とかの迷走神経と呼ぶべきものでなく,いっそう正確には前幹Truncus ventralisおよび後幹Truncus dorsalisと呼ぶべきである.なぜならば両者とも右と左の迷走神経からの線維を含むからである.

1. 前幹Truncus ventralisは食道の前面に接してすすみ噴門ついで小弯に達する.ここで前幹はその終枝に分れる前に小弯の前面にある前胃神経叢Plexus gastricus ventralisを作る.この神経叢から終枝がでて胃と肝臓とに達する.

a)胃枝Rami gastrici.この枝は胃の前面の上に放散して幽門にまで達し,そのさい左および右胃動脈の周りにある交感神経の枝と結合して前胃神経叢Plexus gastricus ventralisをなす.しばしば噴門のそばにある左側の腹腔神経節からの1枝も胃の前面に達している.

b)肝枝Rami hepatici.この枝は小網をt>て肝門に達する.

2. 後幹Truncus dorsalisは前幹よりも太くて,食道の後壁に沿って進み腹腔に達して,大きさの違う次の2部に分れる.

a)胃枝Rami gastrici.この枝は小さい方の部分(線維のおよそ113を含む)であって,胃の後壁にいたる.ここでは小弯の後面に接して後胃神経叢Plexus gastricus dorsalisを作る.ここでも左胃動脈の交感神経叢との結合がある.

b)腹腔枝Rami coeliaci.これが後幹の線維の2/3をなしていて,左胃動脈に沿って腹腔神経叢に達し,それぞれの動脈に伴って肝臓・脾臓(脾枝Rami lienales).膵臓・小腸(腸枝Rami intestinales).腎臓(腎枝Rami renales)および腎上体に達する.

 これらの枝の一部は腹腔神経節に入り,他の一部は直接に上に述べた諸器官に追跡される.膵臓・右の腎臓および腎上体にゆく枝は右の腹腔神経節に入るが,しかし実はそこを通過するだけであることが証明されている.

XI.副神経N. accessorius(図511, 524, 525, 527)

 脊髄から発する副神経の部分は脊髄根Radix spinalisであり,その延髄から出る部分は延髄根Radix myelencephalicaである.その末梢の分布領域を考慮に入れて迷走神経性の副神経Accessorius vagiと脊髄性の副神経Accessorius spinalisとが区別されている.

 副神経は頭蓋腔から外に出るときに頚静脈孔の神経部において迷走神経といっしょに共通な硬膜の鞘に包まれている.頚静脈神経節と節状神経節とのあいだで迷走神経性の副神経(内側枝Ramus medialisと呼ばれる)は迷走神経の幹に移行する.これに対して外側枝Ramus lateralisは脊髄性の副神経であって,胸鎖乳突筋と僧帽筋とに入り,この両筋の運動を支配する.そのほかにこの両筋は頚神経叢Plexus cervicalisからの枝をも受けるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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