Rauber Kopsch Band2. 486   

 つまりこの神経節の末梢がわで前後の2根が合して1つの共通な混合性の幹,すなわち脊髄神経N. spinalisを形成し,これが直ちに枝分れをはじめる(287頁および図355参照).

 この共通の幹は典型的には次の4枝に分れる.

1. 後枝Ramus dorsalis, 2. 前枝Ramus ventralis, 3. 硬膜枝Ramus meningicus, 4. 交通枝Ramus communicans(図355, 530).

 これらの根の太さと走向,後枝および前枝の太さ,共通の幹の長さ,脊髄神経節の大きさと位置は胴の各部でかなりの相違を示し,それについてはここで次のことを述べておく.

 各根は,それが下方で発するものほど脊柱管のなか, それもまず硬膜嚢の中でより長く,より急な傾斜を画いて走るのである.第1頚神経が脊髄から出るところはそれに属する硬膜孔Porus duraeおよびそれに属する椎間孔とちょうど同じ高さにある.この場所に向かってその前,後の両根がそれぞれ集まっている.しかしそれより下方では脊髄から出て下行する根が脊髄とのあいだに作る角度は次第に小さくなり,けっきょく馬尾Cauda equinaになるとすべての根がまったく下方に走るように見える(図37.5°はL1の根より下方のものを示す).

 骨格との位置関係:Nuhnのしらべたところによると第1頚神経は大後頭孔の縁と同じ高さで脊髄から出るし,第8頚神経は第6頚椎の棘突起に向い合ったところから,第6胸神経は第4と第5胸椎の棘突起のあいだから第12胸神経は第10胸椎の棘突起に向い合ったところから,第5腰神経は第12胸椎の棘突起の下半に向い合ったところから,第5仙骨神経は第1腰椎の棘突起の上半の高さで脊髄から出ている.後根は一般に前根よりもいっそう太い.その例外をなすのは第1頚神経であって,その後根の太さは前根のおよそ半分しかない.

 最も太いものは頚膨大の範囲では第6頚神経の両根,腰膨大では第2仙骨神経の両根である.

 変異は根束が脊髄から出るところおよびその経過について決してまれでなく見られる.脊髄神経節の大きさは一般にこれに関与する根の太さに相応している(図371, 378).

 第1尾骨神経の神経節は0.5~2mmの長さがあって,硬膜嚢の内部にあり,時としてはこの神経根の上端の近くにあり,時には下端の近くにあり,またはその長さの中央部にあることもある.最下の仙骨神経でもその神経節がときには硬膜嚢の中にあるが,そのほかの神経節はみな硬膜嚢の外部にある.仙骨ではそれらの神経節が仙骨管の外側で,前方は前仙骨孔に,後方は後仙骨孔に通ずる管のなかにある.

 脊髄神経の混合性の幹が椎間孔から出るときには,この幹が多くのばあいすでに前枝と後枝とに分れている.仙骨のところではこの分れるのがなお仙椎間管Canales intersacralesの内部で行われ,それぞれ前仙骨孔と後仙骨孔とを通って外に出る.最下の2対の脊髄神経は後仙尾靱帯の外側縁と尾椎体とが囲むところの疎性脂肪組織の入っている隙間を通って脊柱管の外に出る(図375).

 第1対の脊髄神経を除いて後根は前根よりもいっそう太いが,前枝Ramus ventralisと後枝Ramus dorsalisとの太さの関係はその逆である.それは前枝が後枝よりもいっそう大きな分布領域をもつのである.それゆえ前枝の方がいっそう太い.ただ第1頚神経だけは前後の両枝がほぼ同じ太さであり,第2頚神経の後枝は前枝よりも太い.

1. 後枝Rami dorsalesは本質的に背部の皮膚と固有背筋とに行くものである.

2. 前枝Rami ventralesは体壁前面の皮膚と筋とに分布し,また上肢下肢もその支配区域に属している.

3. 硬膜枝Rami meningiciは脊柱管と脊髄膜とに分布する.

4. 交通枝Rami communicantesは交感神経系の仲介と関与のもとに内臓と脈管とに達している.また交通枝は交感神経の線維を脊髄の方へ向かっても導くのである(図399).

S.486   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る