Rauber Kopsch Band2. 487   

共通の神経幹のおのおのはそれが分れる枝の全部をもって普通はその神経に相当する体分節Körpersegmentの範囲にとどまる.また上に述べた第1次の4枝のそれぞれが各自の属する領域を守つている.しかしそれには例外がある.そのような例外の1つがたとえば頚部の上部に見られる.第2頚神経の後枝の皮枝は大後頭神経N. occipitalis majorと呼ばれて,知覚性の神経として後頭部を越えて頭頂部にまで広がっている(図519, 531533).

 個々の脊髄神経がその上下両方の広がりにおいて大体にはそれに属する体分節にとどまっているとはいえ,それらの枝が決してたがいにはっきりと境されているのではない.それどころか相隣る分節神経の枝がたがいに結合することは非常にしばしば見られ,場所によってはこれが全く典型的な現象となっている.

 たとえば頚部と仙骨部とにおける後枝Rami dorsalesの結合はいつも見られるものである.しかし前枝Rami ventralesにおける結合と叢形式はそれよりもずっと大きな役割をなしている.全体としてみると人間では各側に前根の作る大きな神経叢が2区別される.それは体幹の上部と下部にある神経叢であり,これらは神経叢のない胸部によってたがいに隔てられている.

 体幹上部の神経叢は頚神経の全部と第1胸神経との前枝がたがいに結合し,しばしば第2胸神経の一部もこれに関与してできている.これは上方は脳神経と結合している.

 体幹下部の神経叢は腰神経および仙骨神経の全部と第1尾骨神経との前枝からなり,これは上方に第12胸神経と結合している.

 しかし後枝Rami dorsalesおよび前枝Rami ventralesがそれぞれ後方と前方で神経叢を作っているのみでなく,硬膜枝Rami meningiciおよび交通枝Rami communicantesもまたはなはだ豊富に発達した神経叢を示すのである.硬膜神経叢Plexus meningicusは各側とも脊柱管の全体にわたっており,腸神経叢Plexus intestinalisもやはり全く同じである.腸神経叢という名前は内臓神経系に属するあらゆる神経叢の全体を意味する.なお,この神経叢はその結節点に神経細胞の集りをもっている点でもはなはだ特徴がある.

[図530]前根と後根の線維が脊髄神経の共通な幹からその4本の枝に移行する経路

 1 後根;2 前根;3 脊髄神経節;4 後枝;5 前枝;6 硬膜枝;7 交通枝;8 交感幹神経節. (交感神経系の項をも参照せよ.)

脊髄神経の5つの区分

1. 頚神経Nn. cervicales, Halsnervenは8対よりなる.

 頚神経の第1対は後頭骨と環椎とのあいだで脊柱管を去り,その下方に続くものは各2つの頚椎ごとにそのあいだから出る.第8頚神経は最下頚椎と第1胸椎とのあいだから出る.頚神経は第6頚神経まではその太さを増し,しかも第6頚神経が最も太くて,それより下では太さを減ずる.

2. 胸神経Nn. thoracici, Brustnervenは12対あり,その第1対を除いてみなその太さが非常に細い.しかし下部の胸神経はふたたびいくらか太さを増す.

 下部の頚神経と第1胸神経が太いことは上肢帯と自由上肢に属するよく発達した筋とはなはだ著しく広がっている皮膚のためである.胴では支配すべき筋がそれにくらべるとずっと少い.そのうえに胸郭を被っている筋肉の一部は全く胸神経の支配をうけず,頚神経脳神経とから支配されているものである.上肢の筋に属して胸部にあるものおよび幅の広い背筋が胸神経の支配を受けていない.そこで胸神経はますます発達が悪くなり,その代りに頚神経はますますよく発達している.

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最終更新日13/02/03

 

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