Rauber Kopsch Band2. 494   

B.脊髄神経の硬膜枝

 各脊髄神経からは1本の硬膜枝が出て,これが直ち 1本の細い枝を受けとるが,この細い枝は交感神経幹の枝からきているのである,硬膜枝はそれゆえ脊髄性の1根(その神経線維は50本)と交感性の1根(その神経線維は約100本)とからなるもので,これができあがるとすぐに椎間孔を通り,逆もどりして脊柱管のなかに達する.

 そこで直ちに太さの異なる2本の枝に分れる.太い方の枝は脊柱管のなかを,その前壁に沿って上方にすすみ,細い方の枝は下方に走る.これらの枝がそれぞれ隣りの硬膜神経N. meningicusの出す枝と相合し,かくして左右各側に長く上下に延びた硬膜枝の係蹄Ansae meningicaeからなる腹方のきれいな縦の連鎖が生じ,これらの係蹄は上下にならんで脊柱の全長にわたっており,上方には頭部に続いている.これは全体としてPlexus meningicus ventralis(前硬膜神経叢)と呼ぶことができる.右側と左側の係蹄の凸縁は内側に向かっていて,細い小枝によってたがいに結合している.脊柱管の後壁にも細い神経が広がっており,これは上に述べた硬膜枝から枝分れしたものであるか,または交通枝から発したものであり,上行枝と下行枝に分れて,反対がわの神経と結合していることもあり,かくしてPlexus meningicus dorsalis(後硬膜神経叢)ができている.

 頭蓋腔の壁における神経の広がりは大体においてこれと同じ規則に従っている.それに属する神経はすでに脳神経の項で三叉神経の3本の枝.迷走神経および舌下神経のそれぞれの硬膜枝Rami meningiciとして記載された.これらにも交感神経の小枝が加わっている.

C.脊髄神経の前枝Rami ventrales(図355, 530, 549)

 概説. 脊髄神経の前枝の分布領域は体壁の前方部の皮膚と筋肉とであって,従って体肢の皮膚と筋肉も含まれる.なぜならば後者は体壁の前方部から伸び出して特別な形をしたものであるからである.体壁の前方部の皮膚の一部が外陰部の形成に使われるので,そのため外陰部もまた脊髄神経の前枝の分布する広い領域の一部をなしている.

 隣り合った脊髄神経の前枝はしばしばたがいに結合し,そのばあい1本の神経が隣りの神経に全部あるいは一部が移行している.かくして鋭角をなしたり,まれには弓状を画くわなが生ずる.これは係蹄Ansaeと呼ばれる.係蹄は胸神経の範囲では存在が不定であるが,ほかのすべての脊髄神経では必ず存在していて,相異なる6つの神経叢の起りをなず.これらの神経叢のおのおのは多くのばあい4本の脊髄神経の前枝が集まってできている.

1.頚神経叢Plexus cervicalis, Halsgeflecht CI~CIV(図525, 534536)

 頚神経叢は上部4つの頚神経(CI~CIV と略記(「ある一定の分節神経の前枝」という長い表現を繰り返さなくてもいいように以下においてはC, Th, L, S, Coと呼ぶが,このばあい常に前枝のみを意味し,その分節神経の全体を意味するのではない.ロ一マ数字によりその分節Segmentの順序が示される.(原著註))する)の前枝よりなり,これらの枝が吻合枝により結合して1つの神経叢をなしている.神経が合して作るわな自身は係蹄Ansaeと呼ばれる.

 第1頚神経の前枝はそれが後枝と分れるときには環椎の椎骨動脈溝のなかにあり,椎骨動脈によって被われている.脊柱頚部の前面では前頭直筋と外側頭直筋とのあいだに現われる.CIIは椎骨動脈と第1肋横突間筋とのあいぎから出る.内側および前方には頭長筋・頚長筋・前斜角筋の停止尖頭があり,外側および後方には中斜角筋・肩甲挙筋・頚板状筋の停止尖頭がある.

 頚神経叢はその高さの頚椎の側面で肋横突起の後結節に停止する諸筋の前方にあり,胸鎖乳突筋の上部によって被われている.

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最終更新日13/02/03

 

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