Rauber Kopsch Band2. 496   

 後方群は多くのばあい1本の神経であって,これは僧帽筋の前縁を越えて走り,枝分れして三角筋の前部を被う皮膚および肩峰部の皮膚に分布する(図534).1本の運動性の小枝がこの群から枝分れして出て(しばしば独立して発していることもある),副神経と結合し,これといっしょになって僧帽筋に達する(この僧帽筋枝Ramus trapeziusについては下記参照).この神経叢の知覚性の領域については図519, 535を参照せよ.

c)頚神経叢の筋枝
1. 分節的に配列する枝で深部の椎前筋群にいたるもの

 頚長筋・頭長筋,・前頭直筋・外側頭直筋・肋横突間筋・前斜角筋と中斜角筋・肩甲挙筋に分布する.

2. 下行頚神経N. cervicalis descendens

 下行頚神経についてはすでに舌下神経との結合の項で述べた.これはC II-vC IVからでる小枝よりなり,これらの小校は鋭角をなして合して1本の小幹となる.この小幹は胸鎖乳突筋に被われて内頚静脈の前を内側かつ下方に走り,そのさい若午の小枝を頚動脈および頚静脈の神経叢にあたえ,肩甲舌骨筋の中間腱の上方で舌下神経の下行枝と結合して舌下神経係蹄Ansa nervi hypoglossiをなす(484頁および図525参照).下行頚神経によって支配される筋は胸骨舌骨筋・胸骨甲状筋・甲状舌骨筋・オトガイ舌骨筋・肩甲舌骨筋である.

3. 僧帽筋枝Ramus trapezius (B. N. A. およびJ. N. A. にはこの名前がない) (図525, 534)

 この枝はかなりに太いもので,特にCIVから,また一部はCIIIから発し,しばしば鎖骨上神経の構成成分となっている.この枝は副神経のすぐ下方で表面に現われ,この神経のそばを平行して走って僧帽筋に達し,この筋への支配にあずかる.この枝と副神経がたがいに神経叢のような連鎖をなしていることがある.

4. 横隔神経N. Phrenicus(図223, 524, 525, 536, 537, 541)

 横隔神経はCIVから出るが, CIIIあるいはCVも1本の細い根を出してこの神経に加わっている.横隔神経は主として運動性の線維よりなるが,知覚性の線維をも含み,後者は心膜や胸膜や腹膜の諸部にゆくのである.またこの神経は若干の小枝を鎖骨下動脈神経叢に送っている.

 横隔神経は前斜角筋の前面の上を下方,ならびに内側に走り,鎖骨下動脈の前に達す篇そして鎖骨下動静脈のあいだをへて胸鎖関節のうしろで胸腔に入る.胸腔に入るところでは多くのばあい内胸動脈の内側面に接している.次いで心膜横隔動静脈とともに胸膜頂の前面を通りすぎてその内側面にいたり,そこから肺根の前方を通り心膜と壁側胸膜の心膜部とのあいだを下方かつ後方に走って横隔膜の上面に達する.そこで本幹に対して多くは直角に放散するところの終枝に分れる.右の横隔神経からは1本の小枝が下大静脈に達している.

 左右の横隔神経の経路が全く同じではない.左のものは心尖の後方を回って曲り,前方に凹の弓を描いて横隔膜に達するが,右のものは右腕頭静脈の外側面に,次いで上大静脈の外側面に接して走り,大静脈孔のいくらか前方かつ外側で横隔膜に逮する.左のものは右のものよりいっそう長い経過をとり,1/7ほど長い.その横隔膜に入るどころが右の横隔神経ではいっそう後方で内側にあり,左のそれはいっそう前方かつ外側にある(図223).

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最終更新日13/02/03

 

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