Rauber Kopsch Band2. 497   

 胸腔内では横隔神経は細い心膜枝Ramus pericardiacusを心膜の前面にあたえる.少数の細い少枝がある間隔をおいて胸膜頂と壁側胸膜の縦隔部とに送りだされる.

この神経の太い終枝である横隔枝 Rami phreniciはそのすべての部分が運動性のものというわけではない.右の横隔神経は各1本の前方の終枝と後方の終枝とに分れ,左横隔神経は各1本の前方,後方および外側の終枝に分れる.

 後方の終枝は左右とも1本の腹枝Ramus abdominalisを横隔膜の下面に送る(これは右側ぞは横隔膜の大静脈孔を通り,左側では横隔膜腰椎部の1つの尖頭あるいは食道孔をとおる).この終枝は両がわで交感神経の枝といっしょになって横隔神経叢Plexus phrenicusという神経細胞を含む1つの神経叢を作っている.交感神経の項を参照せよ.

 いま述べた交感神経との下方の結合のほかに上方の結合もある.それはすでに頚の下部において交感神経の下頚神経節あるいは第1胸神経節から,またときには中頚神経節からも細い1本の小枝がでて横隔神経に達しているのである.

 上に述べたC IIIから出る横隔神経の細い根が舌下神経係蹄のなかをある距離だけ走っていることがあり,その根が出てくるところは舌下神経の1枝であるかのごとく見える.また横隔神経はしばしば鎖骨下筋神経からあるいは直接に下部の頚神経の1つからの枝を1本受けとる.この枝は近年はNebenphrenicus(副横隔神経)と名づけられている.副横隔神経はいろいろと異なる経過をしたのちに多くのばあい第1肋骨の高さで,すなわち肺門より上方でCIVからおこるHauptphrenicus(主横隔神経)に達する.肺門より下方でこれに合することは趣めてまれである.--W. FelixはNebenphrenicus(副横隔神経)を20%に見たが,E. Ruhemann(Verh. anat. Ges.,1924)は全例の半数以上に認めている.

[図535]第2,第3,第4頚神経の知覚線維の分布領域 (L. Bolk)

2.腕神経叢Plexus brachialis, Armgeflecht CV~CVIII, ThI. (図537548)

 腕神経叢の形成にはC V~C VIII(それらの前枝Rami ventrales)が全部, C IVは1本の小枝, Th Iはその大部分が加わるのである.しばしばTh IIもまた細い1根をこの神経叢に送る.そのうえ腋窩においてTh IIの外側皮枝Ramus cutaneus lateralisとの結合が(肋間上腕神経N. intercostobrachialisとして)常に存在する.

 第1胸神経もそれ以下の胸神経と同じく後枝Ramus dorsalisをそれに属する肋間隙をへて椎体の側方から後方に送る.一方,その前枝Ramus ventralisは直ちにすこぶる大きさの違う2,すなわち細い肋間神経と太い上腕枝Ramus brachialisとに分れ,後者は腕神経叢の下方の根をなし,直ちに第1肋骨を越えて上方にいたる.

 腕神経叢はかくして太さがまちまちである5~6個の()神経叢根Radices plexus(brachialis)をもっている.諸根の太さはCVからCVIIまで増し,次いでふたたび減ずる.

 この神経叢の諸根は前と後の肋横突間筋Mm. intercostotransversarii ventrales et dorsales(後者はMm. intertransversarii posteriores, B. N. A. )のあいだを通り,斜角筋裂において現われ,そこを出るときに中斜角筋の起始はこれらの根の後方に,前斜角筋の起始は前方にある(図537, 541).上方の3つの根は下行性の,第4の根は水平の,第5(および第6)の根は上行性の進み方をする.そしてこれらすべての根が鋭角をなしてたがいに結合し,それによって腕神経叢の初まりAnfangがなされ,さらにその根索の配列が変つたりしてこの神経叢は完成されるのである.それゆえ腕神経叢は全体として1つの大きな縦の広がりを有ち,これは斜角筋裂から上腕骨頭のところまで延びている(約15~20cm).

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最終更新日13/02/03

 

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