Rauber Kopsch Band2.501   

B.腕神経叢から出て上肢帯に分布する神経

1. 後胸神経Nn. thoracici dorsales

 これは2本あり,1つは菱形筋への肩甲背神経N. dorsalis scapulae,他は外側鋸筋への長胸神経N. thoracicus longusである.

a)肩甲背神経N. dorsalis scapulae(図536, 540)

 肩甲背神経は腕神経叢の背方の層に属し,CVから枝分れして出て,直ちに中斜角筋を貫き,後斜角筋と肩甲挙筋とのあいだを走り,大および小菱形筋に達してこれを支配する,肩甲挙筋にも1枝を送る.しばしば外側鋸筋の第1尖頭がこれから1本の細い枝を受けている.肩甲背神経はその経路の一部が,頚横動脈の下行枝と伴っている.

b)長胸神経N. thoracicus longus(図536, 537, 541)

 通常はCVとCVIとからできる(CVIIからの細い1枝が加わっていることがある).この神経はおよそ腋窩線Linea axillarisの方向をとってすすみ,外側鋸筋の諸尖頭に分布して終る.

 日本人ではこの神経が多くはCVIとCVIIとから生じ,いっそうまれにはCVからの1小枝が加わっていることがある(Hirosawa 1931).

2. 前胸神経Nn. thoracici ventrales(図536, 541)

 多くのばあい2本ある.橈側神経束Fasciculus lateralisから出る方の神経は鎖骨下動静脈の前方で大胸筋の内面に達し,そのなかで枝分れする.この神経が尺側神経束Fasciculus medialisからでる第2の神経に細い1枝を送っており,後者は小胸筋と大胸筋とに分布する.

3. 鎖骨下筋神経N. subclavius(図537)

 これは多くのばあい腕神経叢の上神経幹からでるが,いっそうまれにはCVからでて,しばしば1枝を横隔神経に送り,横隔神経の外側で前斜角筋の上を通り,鎖骨の後方を回って鎖骨下筋に入る.

4. 肩甲上神経N. suprascapularis(図537, 540, 541)

 腕神経叢の上神経幹から発し,その後方の層に属していて,大鎖骨上窩(=肩甲鎖骨三角)のなかをこの神経叢の外側縁に沿って下方,外側方,後方に走り,肩甲舌骨筋に沿って肩甲切痕に達し,この切痕を通って棘上窩に達する.そして棘上筋に被われて,肩甲頚と棘下窩にいたる.棘上筋と棘下筋ならびに肩関節の関節包がその分枝を受ける.

5. 肩甲下神経Nn. subscapulares(図537, 541)

 これは腕神経叢の種々な部分からでる2~3本の神経よりなり,肩甲下筋・大円筋・広背筋にゆく.そのなかで最も長くて,かつ外科学的に最も重要なものは胸背神経N. thoracodorsalisであり,これは肩甲骨の腋窩縁に沿って走り,広背筋を支配する.

 第1肩甲下神経はCVおよびCVIからでて肩甲下筋に入る. 第2肩甲下神経は背側神経束より生じ,肩甲下筋の外側下部と大円筋とに分布する.また大円筋への枝が独立して発することもあり,あるいは腋窩神経から発することもある.

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最終更新日13/02/03

 

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