Rauber Kopsch Band2.502   

--第3肩甲下神経,すなわち胸背神経N. thoracodorsalisと呼ばれるものはこの群のうちで最もよく発達し,背側神経束あるいは腋窩神経から発する.いっそうまれには橈骨神経からおこる.そして肩甲骨の腋窩縁に沿って走り広背筋に達する.

6. 腋窩神経N. axillaris(図540542)

 腋窩神経は背側神経束から発し,外側腋窩裂を通って上腕骨をめぐって背側上腕回旋動脈とともに走る.そして三角筋の内面に達し,この筋のなかに広がり,その途中で小円筋への枝を分ち,また次にあげる若干の特別な枝をだす:すなわち

 関節枝Rami articularesは肩関節に分布する.そのなかにRamus intertubercularis(結節間枝) (Rauber) という枝がある.

 橈側上腕皮枝Ramus cutaneus brachii radialis.この神経ほ三角筋と上腕三頭筋長頭とのあいだを貫いて皮膚に達し,上行枝と水平枝と下行枝となって,三角筋の背方の半分を被う皮膚ならびに上腕の上部の伸側の皮膚に放散する(図548).

[図540]右肩甲部の神経 うしろがわから見る.(HirschfeldおよびLeveillé) 1/5

 f 大円筋;g 広背筋;3 棘上筋への枝;4 棘下筋への枝;5 腋窩神経;6 小円筋に分布する腋窩神経の枝;7, 7 三角筋に分布する腋窩神経の枝;8 腋窩神経の皮枝.

 

c)上肢の神経
1. 筋皮神経N. musculocutaneus(図537, 541, 542, 547, 548)

 この神経は橈側神経束から出て,初めは正中神経の外側面に接しているが,次第にこれから離れ,多くの例では烏口腕筋を貫き,ついで上腕筋と上腕二頭筋とのあいだで上腕二頭筋腱の外側面に達し,肘窩より上方で上腕筋膜を貫く.皮下にでるとこの神経のつづきは橈側前腕皮神経N. cutaneus antebrachii radialisとよばれて,各1本の背側および掌側の2終枝に分れ,この両枝は前腕の外側縁に沿ってすすみ手関節と母指球とのあたりまで達する(図547, 548).

 筋皮神経の枝で上腕に分布するものは次のごとくである:a)烏口腕筋M. coracobrachialisへの神経;b)上腕二頭筋の両頭M. biceps brachiiへの神経;c)上腕筋M. brachialisへの神経,これは肘関節への細い枝をも導いている;d)常に存在するとは限らないが上腕の下方1/3で正中神経と合する1結合枝があり,これはときには2本以上あって,かつ個体的変化にとむ(この結合枝はフランス人では約39%,日本人では43%に見られる[Hirosawa 1931]).筋皮神経は初めはごく細いこともあり,また太いこともあるが,上に述べた正中神経との結合枝がそれを普通の太さに直すのである;e) さらに上方から発して,上腕動脈に伴って烏口腕筋の停止よりも下方まで達する細い1枝があって,これが上腕動脈に細い枝をあたえ,なお上腕骨の栄養管を通って骨の実質および骨髄に達している.これはかんたんに上腕骨のKnochennerv(骨神経)と呼ばれる.

 橈側前腕皮神経N. cutaneus antebrachii radialisからは掌側の終枝volarer Endastが出て,これはふつうに前腕の橈側皮静脈V. cephalica antebrachiiの前を通って,その分布領域にいたり,枝分れして手関節および母指球にまで達し,これは日本人においても嶢骨神経の浅枝R. superficialis n. radialisとほとんど常に結合している(Hirosawa 1931).--背方の終枝dorsaler Endastは橈側皮静脈の背方を通り,前腕の外側縁に達して,この縁の背側面の皮膚に手関節の近くまで分布する.

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最終更新日13/02/03

 

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