Rauber Kopsch Band2.505   

2. 正中神経N. medianus(図537, 541543, 545, 547, 548)

 この神経は腕神経叢の(上方の)橈側神経束と(下方の)尺側神経束とからでる.その橈側根Radix radialisと尺側根Radix uInarisとよばれる両根はMedianus gabel(正中神経の両叉)をなして腋窩動脈をはさみ,この動脈の前で鋭角をなして合する.そしてこの動脈の前面から上腕の上部で間もなく動脈の外側面に達し,この動脈とともに尺側上腕二頭筋溝のなかを遠位に走る.上腕の下方1/3では正中神経は上腕動脈の前(まれにはその)面を越えて次第にその内側面に達する.すなわちこの神経は上腕動脈のまわりに長く延びた1つのラセンを画くわけである.肘窩では円回内筋の両頭のあいだを通り,ついで前腕の中央線上で浅指屈筋と深指屈筋とのあいだを通り,遠位に走って手関節に達する.正中神経は手関節より上方では筋膜の下にあり,そして多くは(88例中53例)橈側手根屈筋と長掌筋との腱のあいだにあり,またそれよりいっそう少いことであるが(88例中35例)長掌筋と浅指屈筋との腱のあいだにある.次いでこの神経は指の諸屈筋の腱の上で,手根管を通って手掌に達し,手掌腱膜の下でその終枝に分れる.

 正中神経は上腕においてはすでに上に述べた存在の不定な結合枝を筋皮神経にだし,まれには1本あるいはそれ以上の枝を上腕筋にあたえる.

 変異:正中神経が表面にでて円回内筋の尺側頭の上にあることがあって,そのときは円回内筋と橈側手根屈筋との間を走って,その後にやっと正常の位置にもどる(Ferner, Anat. Anz.,84. Bd. ).

 正中神経の枝で前腕に分布するものを次にあげる:

a)関節枝Rami articularesは肘関節に,

b)筋枝Rami musculares(図543)は深指屈筋の両尺側頭と尺側手根屈筋とを除く前腕のすべての屈筋に達する.

 これらの枝の上方の1群は円回内筋・長掌筋・橈側手根屈筋を支配し,また浅指屈筋の上顆からの起始をも支配する.--中央の1群は長母指屈筋の上顆における存左不定の起始・浅指屈筋の橈側頭を支配し,またこの群にすぐあとで特に述べる掌側前腕骨間神経N. interosseus antebrachii volarisも属している.--第3の下方の1群は浅指屈筋の示指に行く筋頭のみに入っている.

c)掌側前腕骨間神経N. interosseus antebrachii volaris(図543)は掌側骨間動脈とともに前腕骨間膜の上で長母指屈筋と深指屈筋とのあいだを走り,方形回内筋に達してその背側面からこの筋に入る.この神経は次の枝をだしている.

α. 筋枝Rami muscularesを長母指屈筋と深指屈筋の橈側部とに送る;--β. N. membranae interosoeae antebrachii(前腕骨間膜神経) (Rauber)を出す.これは各1本の橈側枝と尺側枝とに分れ,両者は橈骨と尺骨との両方の骨間稜に沿って遠位に走って方形回内筋にまで達し,骨間動静脈と骨膜と前腕の骨じしんに枝をあたえ,また数多くの小さいファーテル層板小体を有っている;--γ. 筋枝Ramus muscularisを方形回内筋にあたえる;--δ. 掌側前腕骨間神経の最後の部分は手関節の背側面にまで続いている.

d)掌枝Ramus palmaris(図543).これは細い枝であって,手関節より上方の種々な高さで正中神経から発し,橈側手根屈筋と長掌筋との腱のあいだで前腕筋膜を貫き,皮下を走って手掌に入り,2本の枝に分れて,これらの枝は母指球の皮膚と手掌の皮膚に終る.

 上腕および前腕における正中神経の枝分れのぐあいは日本人においてもだいたい同様である(Hirosawa 1931).

S.505   

最終更新日13/02/03

 

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