Rauber Kopsch Band2.509   

α)関節枝Rami articulares:いく本かの関節枝があって,上腕骨の尺骨神経溝のなかを通り,肘関節の関節包に達している.

β)筋枝Rami musculares(図543):これらは尺骨神経が尺側手根屈筋の両頭のあいだを貫通するときに分れて出て,この筋と深指屈筋の両尺側頭とにゆく.

γ)手掌枝Ramus palmaris(図547):これは1本の細い枝で前腕の中央より上方で尺骨神経から発し,尺骨動脈に伴って浅掌動脈弓にまで達し,この動脈に数多くの細小枝を送り,またいろいろな揚所で細い枝を前腕の下方1/3の皮膚および小指球にあたえる.これらの枝のうちの1本は尺側前腕皮神経の1小枝と結合していることがある.

 変異:この枝はすでに肘窩で分れていることがあり,普通のように多くの皮枝を出したのちに手掌腱膜の下で正中神経と吻合している.R. Spanner(Anat. Anz., 56. Bd.,1922).

δ)手の背側枝Ramus dorsalis manus-(図546):この枝は前腕の中1/3と下方1/3の境のところで前腕の背側面の方に向かって,尺骨と尺側手根屈筋とのあいだを通る.この背側枝は手関節よりいくらか上方で筋膜からでて,尺骨小頭の上で背側指神経Nn. digitales dorsalesという3本の終枝に分れる.この3枝は:

1. 小指の背側尺側面への1枝; 2. 第4中手骨間隙の背側面で2つの部分に分れる1枝,その2つの部分はそれぞれ第5指の橈側面と,第4指の尺側面とに基節骨の範囲において分布する;--3. 橈側の1枝で,これは橈骨神経の浅枝R. superficialis n. radialisからの1小枝と結合し,第3中手骨間隙を遠位の方に走り,2つの部分に分れ,この両部分は第3指と第4指のたがいに向い合った側面にゆくのである.

 変異:それゆえ全体として尺骨神経の背側枝は5本の背側指神経となる.すなわち5本の手指に必要な神経の数の半分をなしている.残りの橈側の半分は橈骨神経の浅枝によって支配される.尺骨神経からおこる背側指神経の数は,多くの動物ではいま述べた数よりいっそう少いことが正常であり,人間でもその数が1本あるいは0にまで減っていることがある.そのばあいには橈骨神経の浅枝がその補充をなしている.しかしまれには尺骨神経からの背側指神経の数が普通より増していることがある.

b)尺骨神経の両終枝  尺骨神経は横手根靱帯の上では手の掌側枝Ramus volaris manusとなっていて,ここで浅枝Ramus superficialisと深枝Ramus profundusとに分れる(図545).

α)浅枝Ramus superficialisは短掌筋と小指球の皮膚にそれぞれ1本ずつの小枝をあたえ,ときには第4虫様筋にも1小枝を送り,そして2本の総掌側指神経Nn. digitales volares communesに分れる.

 その1本は小指の尺側面へいたる尺側小指掌側神経N. volaris digiti V. ulnarisであり,他の1本は第4総掌側指神経N. digitalis volaris communis IVである.後者は第4中手骨間隙に沿って走り,第4指と第5指のたがいに向い合った側面への2枝に分れる.これを橈側小指掌側神経N. volaris digiti V. radialisおよび尺側第4指掌側神経N. volaris digiti IV. (quarti)ulnarisという.その経過のあいだにこの両枝からは中節骨と末節骨の背側面にいたる枝が出る.--手掌では指にゆく諸神経は手掌腱膜と浅掌動脈弓との下で,諸屈筋の腱の前にある.第4中手骨間隙のなかにある神経は正中神経から尺骨神経との交通枝Ramus communicans cum n. ulnariを受けとり,また第4総掌側指神経からは若干の細い皮神経と血管神経とが出ている.

β)深枝Ramus profundus. 豆状骨を回って走る1小枝によってこの深枝は手の背側枝Ramus dorsalis manusと結合し,また小指球の筋膜下にある諸筋に1本の枝をだして,尺骨動脈の深枝とともに小指屈筋と小指外転筋とのあいだを通って深部に入る.この深枝は手掌では深掌動脈弓の近位縁で,諸屈筋の腱と骨間筋とのあいだにある.この神経の弓状部からは次のような多くの枝がでている:すなわち

S.509   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る