Rauber Kopsch Band2.513   

 橈骨神経は手背の尺側半を除く上腕と前腕との伸側の全体にわたって運動性の枝と知覚性の枝をだしている.手背の尺側半のみは尺骨神経の背側枝によって支配されるのである.

a)橈骨神経から出て上腕に分布する枝

1. 背側上腕皮神経N. cutaneus brachii dorsalisは上腕筋膜を貫き,上腕三頭筋の尺側頭を被っている上腕の背側面の皮膚に分布して肘の近くにまで達している(図547, 548).

2. 筋枝Rami muscularesは上腕の伸筋の全体にゆく.それを詳しくいうと:

 a) 上腕三頭筋長頭への若干の枝;--b) 上腕三頭筋尺側頭への1本の枝;これは多くは各1本の上枝と下枝とに分れる.その下枝は長くて橈骨神経の尺側側副枝R. collateralis ulnaris nervi radialisとよばれ,これは尺骨神経といっしょに所々で1つの結合組織の鞘に包まれて,尺側上腕筋間中隔の後方に接して下方に走り,次いで三頭筋尺側頭のなかに入る.また若干の小枝が肘関節の関節包に達している;--c)上腕三頭筋の橈側頭および肘筋への1枝;これは2本に分れ,その1本は上腕三頭筋の橈側頭に分布し,他の1本が上腕三頭筋の尺側頭に枝をあたえ,この筋の内部を通って肘筋にいたる.

3. 背側前腕皮神経N. cutaneus antebrachii dorsalis(図548).これは背側上腕皮神経よりも太くて,上腕三頭筋の橈側頭と尺側頭とのあいだあるいは尺側頭と腕橈骨筋とのあいだで上腕筋膜を貫き,肘頭と橈側上顆とのあいだをへて,前腕の背側面に達する.この神経は上腕の下部の伸側の皮膚に分布し,また橈側前腕皮神経の分布領域と尺側前腕皮神経の背側枝の分布領域とのあいだの前腕の背側面に分布し,手関節Handgelenkまでは達していない.

 上腕筋と腕橈骨筋とのあいだの隙間で橈骨神経から出るものは,a)腕橈骨筋への核;これは1枝を肘関節にあたえるのが常である;--b) 長橈側手根伸筋への枝;この枝が橈骨神経の深枝からも出ていることがある;--c)上腕筋への1枝,ただしその存在は不定.

b)橈骨神経の両終枝

1. 橈骨神経の深枝Ramus profundus n. radialis(図543, 544).

 これは2本の終枝のうちの太い方のもので,回外筋を貫いて,この筋から前腕の背側面にあらわれ出る,そこでこの神経はかなり多数の枝に分れ,これらの枝は伸筋群の浅層と深層とのあいだをへて,前腕のすべての伸筋に分布する.これらの枝のうちで最も長いものは背側前腕骨間神経N. interosseus antebrachii dorsalisである.これは伸筋群の深層と浅層とのあいだにあって,前腕の遠位1/3で前腕骨間膜の背側面に達し,初めは短母指伸筋と長母指伸筋とのあいだにあるが,次いで長母指伸筋に被われ,最後に総指伸筋の諸腱と固有示指伸筋に被われて,手根の背面にでて,ここで広がって終る(図544).

 その枝はくわしくいうと次のごとくである(図544):α. 短橈側手根伸筋と回外筋への若干本の枝;--β. 尺側手根伸筋と総指伸筋と固有小指伸筋への1本の枝;--γ. 長母指外転筋と短母指伸筋へいたる1枝;--d. 長母指伸筋への1枝;--e. 固有示指伸筋への1枝;--ξ. 前腕骨間膜に分布する若干の小枝,この小枝のうちの1本がしばしば前腕骨間膜を貫いて掌側前腕骨間神経の1小枝と結合する;また橈骨と尺骨の骨膜への細い枝が出る;--η. 手関節Handgelenkの背側面への若干の小枝;--θ. 手根間関節および総手根中手関節の背側面にいたる若干の小枝,その遠位端は尺骨神経の深枝Ramus profundus n. ulnarisの穿通枝と結合していることがある.

2. 橈骨神経の浅枝Ramus superficialis n. radialis(図543, 544, 546548).

 これは深枝よりもいっそう細く,はじめは前腕の掌側面にあり,腕橈骨筋に沿って橈骨動脈の橈側に接して遠位の方向に走る.

S.513   

最終更新日13/02/03

 

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