Rauber Kopsch Band2.515   

 変異:欠如すること(趣めてまれ)および橈側前腕皮神経により代られていることがある.手背における尺骨神経の背側枝と橈骨神経の浅枝の分布領域はある程度の変異を示す.普通はこの両神経のそれぞれが手背と手指を合せたものの尺側半と橈側半とに分布するが,橈骨神経の浅枝はそれより大きい領域に分布していることがある(509頁参照).まれに1本の小枝が上腕の上部で橈骨神経から尺骨神経に達していることがある.

3. 胸神経の前枝Rami ventrales der Brustnerven

 胸神経の前枝はまた肋間神経Nn. intercostalesとも呼ばれる.上方の11対の前枝だけが(胸郭をつくる肋骨との関係において)本当に肋間隙にあって,第12番目の前枝は最下の肋骨の下方にあるので,これは肋下神経N. subcostalisと呼ばれる.

 第1~第6肋閻神経だけが完全に肋間隙のなかを走って胸骨縁にまで達し,第7~第12肋間神経は肋間隙の前端で終るのでなくて,ここを越えて腹壁に入り,白線のあたりにまで達する.白線は腹部にある一種の胸骨Abdominalsternumといえるのである.腹壁に達するためには第7~第9肋間神経は上昇の方向をとっているところの肋軟骨の内面と交叉しなければならない.上部の肋間神経はかなり水平の方向にすすみ,下部のものは肋骨が扇形に放散するのに一致して,下方のものほどいっそう下方に向かった走り方をしている.

 第12肋間神経を除くすべての肋間神経は後枝から分れたのちに,その属する肋間隙のなかを内肋横突靱帯の前方で外肋間筋の内面上を走る.脊柱から肋骨角にいたるまでは内肋間筋が無いので,この範囲では肋澗神経は胸内筋膜と胸膜の肋椎部とに被われるだけである.内肋間筋がはじまるとこれらの神経は内肋間筋と外肋間筋とのあいだにある.肋間神経は初めは肋間隙の上縁に沿って走るが,次第にこの隙の中央部にいっそう近づく.肋間動静脈に伴われていて,これらの動静脈が肋骨溝の中にあり,肋間神経はその血管の下方にある.第1と第2の両肋間神経は部分的にはその属する肋骨の内面にさえある.最下の肋間神経は腰方形筋の前面の上にある.第7ないし第11肋間神経は横隔膜肋骨部の尖頭のあいだをへて,腹壁の筋肉内に入り,それからは第12肋間神経も同じことであるが,腹横筋と内腹斜筋とのあいだを走っている.

 肋間神経の分布する筋は次のものである:内肋間筋と外肋間筋・肋下筋・胸横筋・長と短の両横突肋骨筋・上後鋸筋と下後鋸筋・幅の広い3つの腹筋・腹直筋・錐体筋.

 肋間神経が分布する広い皮膚領域は後方は背腹境界線の胸の部分により(488頁参照),前方は正中線により境される.胸部の上部の皮膚は頚神経叢からの分枝く鎖骨上神経)を受ける.また鼡径靱帯の上方の1つの細長い皮膚区域と恥丘のところとは腰神経の範囲に属する.

 この皮膚領域に分布するのは2列に並んだ皮枝である:それは 1. 外側の太い方の枝,すなわち外側皮枝Rami cutanei lateralesの1列,2. 前方の正中線の近くにある細い方の枝,すなわち前皮枝Rami cutanei ventralesの1列である.

 すなわち各肋間神経は1本ずつの外側皮枝と前皮枝とを送り出している.第1肋間神経のみは若しもその外側皮枝が腕神経叢の第5番目の根をなしていない場合にはこの枝を有っていないのが普通である.この第5番目の根が第1肋骨を越えてすすんでいる.第2肋間神経の外側皮枝の一部は511頁に述べた肋間上腕神経である.第3肋間神経までも尺側上腕皮神経と結合していることがある.前皮枝は全部の肋間神経に存在し,第1肋間神経にだけは時に欠くことがある.腹壁を穿通している前皮枝は2本以上あることがまれではない.またその出る場所がしばしば不規則である(図549参照).

a) 肋間神経の結合

1. 隣りの体分節に属する前枝との結合がある,つまりCVIIIとはTh Iの結合枝により,LIとはTh XIIによって結合する.

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最終更新日13/02/03

 

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