Rauber Kopsch Band2.517   

2. Th IとTh IIとのあいだの結合を除けば,肋間神経どうしの間の結合はごくまれにしかみられない.しかしその他のもの(幹でなく枝を指すか,小川鼎三)のあいだでは上方の神経から出て下方のものに達する細い小枝による結合が所々にみられる.

b)肋間神経の枝
1. 筋枝Rami musculares

 上方の7本の肋間神経と下方の5本とを分けて述べるのが適当である.それは下方の5本はその大部分が腹筋に達するからである.

 1~第7肋間神経は次の筋枝を送り出している:α. 外肋間筋と内肋間筋と肋下筋への筋枝,これらの枝は各肋間隙になん本かずつ存在し,後方にある枝が概して最も太い;--β. 短と長の横突肋骨筋への筋枝,これは肋間神経の初めの部分から出る;--γ. 上後鋸筋への筋枝.. これらの枝はTh 1-Th IVに由来し,外肋間筋を貫いて上後鋸筋の4つの尖頭に入る;最も上方の尖頭はしばしば腕神経叢からの1小枝を受けている;--δ. Th Vから腹横筋へいたる筋枝;--ε. 腹直筋の上部への筋枝,これはThV-Th VIIから出る.

 8-第12肋間神経は次の筋枝を出している:

 α. 外肋間筋と内肋間筋と肋下筋への筋枝;--β. 短と長の横突肋骨筋への筋枝;--γ. 下後鋸筋への筋枝,これはTh IX-Th XIから出る;--δ. 外腹斜筋と内腹斜筋と腹横筋への筋枝,第8から第12までの肋間神経は内腹斜筋と腹横筋とのあいだを通ってこれらの3筋に分布する;--ε. 第1腱画より下方の腹直筋に分布する筋枝.それは第8一第12肋間神経の前端部が腹横筋と内腹斜筋とのあいだの間隙から出て,腹直筋鞘に入り,内面からこの筋肉に入るのである;--ξ. 錐体筋への筋枝.

2. 皮枝Rami cutanei(図549)

 皮枝は筋枝よりもいっそう太く,外側皮枝Rami cutanei lateralesと前皮枝Rami cutanei ventralesとがある.

a)外側皮枝Rami cutanei laterales(図537, 541, 549)

 外側皮枝は肋間隙のおよそ中央で肋間神経から出て,前腋窩線と前正中線との中間で外肋間筋を貫き,下部のものは外腹斜筋を貫いて皮膚の下に出る.そのさい第1から第7までの外側皮枝は外側鋸筋の尖頭のあいだから現われ,第8~第12の外側皮枝は肋骨に停止する広背筋の尖頭の前に現われる.Th XIIの外側皮枝は外斜腹筋を貫く.

 これらの外側皮枝のすべてが広背笏の肋骨尖頭の毎域で2枝に分れ,これらの枝は皮膚の下でたがいに反対の方向に離れてゆく.すなわち太い方の前枝Rami ventralesは前方に,後力の後枝Rami dorsalesは後方にすすむ.Th IIの外側皮枝の後枝は上述の肋間上腕神経N. intercostobrachialisである(図237).この神経はときにはTh IあるいはTh IIIから出ていることがある.日本人ではTh IIから出るのが男では96.5%,女では94.7%である(Hirosawa 1931).

 ThII~Th VIの前枝は大胸筋の縁を廻って内側に走り,乳頭までの皮膚に分布する.第4から第6までの前枝からはなお外側乳腺枝Rami mammarii lateralesという枝が乳腺に達している. Th VII~Th XIの前枝は腹直筋のおよそ外側縁までの範囲で腹壁の皮膚に分布する.そのほかにTh XIIの前枝は1枝を腸骨稜を越えて中臀筋を被う皮膚に送っている.ときにはこの枝が大転子のあたりまで迫跡できる.

b)前皮枝Rami cutanei ventrales(図549)

 第1~第6肋間神経の前皮枝Rami cutanei ventralesは大胸筋を貫いて胸骨の側縁で皮膚に達し,そこで内側方と外側方とに広がっている.第2~第4前皮枝からの枝が乳腺の皮膚に達する.これが内側乳腺枝Rami mammarii medialesである.

 第7~第12肋間神経の前皮枝Rami cutanei ventralesは腹直筋鞘に入って腹直筋に分布する神経の知覚性の終枝である.これらの枝は腹直筋を貫き,またはその内側縁を廻って腹直筋鞘の前葉に達し,この前葉にある隙間を通って皮膚に達する.最下(第12の)肋間神経の前皮枝は濟と恥骨結合との間の中央よりやや下方にある.

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最終更新日13/02/03

 

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