Rauber Kopsch Band2.520   

つまりこの神経叢のなかで比較的前方あるいは後方にある層というものが形態学的な意味における前方および後方の両神経の区別と一致すると考えてはいけないのである.下肢の前方と後方にある神経の層といってももっぱら脊髄神経の前方の枝(すなわち前枝Rami ventrales)に由来している.

 Eislerによればその後方の層には次の諸神経が属する:すなわち腓側大腿皮神経・上臀神経と下臀神経・梨状筋への神経・腓骨神経,内側下臀皮神経.前方と後方との両層に由来するのは後大腿皮神経である.その他の神経はみな前方の層に属している,腰仙骨神経叢の組成は著しい程度に個体的の変動を示す.この神経叢の全体が椎骨1個だけ下方に,それよりまれには上方にずれていることがある.下方にずれているばあいは,正常例で第25番目の椎骨に付着している寛骨が第24番目の椎骨に付いており,上方にずれているばあいは寛骨が第24番目の椎骨に付着している.

4.腰神経叢Plexus lumbalis, Lendengeflecht.(図550556, 558)

 腰神経の前枝は第1から第5へと著しくその太さを増す.LIは直径が約2.5 mmあり,LIIはすでは約4mm,LIIIとLIVとは約6mm,さらにLVは直径約7mmある.

 腰神経の前枝は係蹄Ansaeをなしてたがいに結合している.LI~LIIIとLIVの上半とは係蹄を作って相つづき1つの著しい神経叢をなしている.これが腰神経叢Plexus lumbalis, Lendengeflechtである.これは大腰筋の肉質のなかにうずまって(図550, 551),腰椎の肋骨突起の前方にある.

 LIVの下方の小さい方の部分はLVと結合して腰仙骨神経幹Truncus lumbosacralisという1つの太い幹となり,これは分界線を越えて小骨盤のなかに達し,梨状筋の前方でその下につずいている前枝と合して仙骨神経叢Plexus sacralisとなる.腰神経係蹄Ansae lumbalesは3つあって,次のぐあいになっている:すなわちLIは2枝に分れ,その上方のものは末梢の枝に分れてしまい,下方のものがLIIと結合する.LIIは第4腰椎のところでLIIIの大きい方の部分と合し,すぐそのあとでLIVの大きい方の部分と結合する.これらの3根が鋭角をなして合することにより,この神経叢の主要神経である大腿神経N. femoralisができあがる.

a)腰神経叢の結合

1. Th XIIとの結合;

2. LIVの下部による仙骨神経叢との結合;

3.2~3本の長い交通枝による交感神経の腰部との結合.

b)腰神経叢の枝

 短い枝としては次のものがある:

筋枝Rami musculares

1. 腰方形筋への枝;これは耳の初部からでる;

2. 大腰筋および小腰筋への枝;第2と第3の腰神経係蹄からでる.

長い枝としては次のものがある:

1. 腸骨下腹神経N. iliohypogastricus(図549551, 553, 558)

 これは腰方形筋の前面に達し,最下の肋間神経に平行して斜め下方に走り,腸骨稜の上で腹横筋と内腹斜筋とのあいだに入る.そして腸骨稜め中央部の上でその外側皮枝Ramus cutaneus lateralisをだす.外側皮枝は腸骨稜の中央のところで内外の両腹斜筋を貫き,との稜を越えて下方に走って中臀筋を被う皮膚に達し,ここで第12肋間神経の外側皮枝と結合していることが多い.

 腸骨下腹神経の幹の続きは前皮枝Ramus cutaneus ventralisであって,これは腹横筋と内腹斜筋とのあいだを走り続け,この両筋および外腹斜筋に枝をあたえる(筋枝Rr. musculares).そして腹膜下鼡径輪の上方で内腹斜筋を貫き,さらに外腹斜筋の腱膜を貫いて,浅鼡径輪の内側縁のところで皮膚の下に達する.前腸骨棘の上では次に述べる腸骨鼡径神経と結合し,後者をすっかりその中に取りこんでいることがある.

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最終更新日13/02/03

 

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